今年度は、「白痴」と「悪霊」を読んでゆきます。このふたつの小説は対照的です。人間の罪をすべてわが身に引き受ける、清純なムイシュキン公爵が小説の中心人物になる「白痴」、すべてが許されていると考える、悪そのものの美男子が小説の中心人物になる「悪霊」。この人間の罪をめぐるふたつの小説を読みながら、人生、いかに生きるべきかということを受講生とともに考えてゆこうと思います。

次の二点に留意しながら授業をすすめてゆきます。
（1）ドストエフスキーの作品は他の作家とは違う「ポリフォニー小説」という形式で書かれているということ。
（2）ドストエフスキーのポリフォニー小説を背後から支えているのは、彼のキリスト教思想であるということ。

テキストはいずれも新潮文庫の最新版「白痴」（木村浩訳）、「悪霊」（江川卓訳）を使います。授業や宿題は新潮文庫の最新版にそって行いますので、ご用意下さい。
なお、最初の授業には「白痴（上巻）」と筆記用具をご持参下さい。

【講師】萩原 俊治 名誉教授