工学×理学 T細胞内部へのデリバリーに成功! ―デンドリマーを用いたpH応答性デリバリーシステム― 〈第4のがん治療法 免疫療法の新技術〉
更新日:2022年1月26日
本学 大学院 工学研究科 児島 千恵 准教授、松本 章一 教授および理学系研究科 藤井 郁雄 教授、中瀬 生彦 教授らの研究グループは、樹状構造をもつ単分子ナノ粒子であるデンドリマーの表面に疎水性アミノ酸のフェニルアラニンを集積させることで、既存技術では難しかった免疫細胞(T細胞(解説))の細胞内へのデリバリーに成功しました(図1)。
これまで、がん免疫療法において重要な役割を果たすT細胞へのデリバリーは困難でしたが、T細胞の内部への効果的なデリバリーを可能とする本技術は、がん免疫療法の治療効果の向上につながる新技術として期待されます。
論文タイトル「Carboxy-terminal dendrimers with phenylalanine for a pH-sensitive delivery system into immune cells including T cells」

図1
本研究のポイント
- デンドリマーの末端に疎水性アミノ酸であるフェニルアラニンを集積させることで、T細胞を含む免疫細胞の内部へのデリバリーに成功。
- 弱酸性条件ではT細胞への取り込みが亢進することが判明。がん細胞の周辺は弱酸性条件になっているため、がん細胞の周囲にあるT細胞に効果的にデリバリーできる可能性が示された。
- T細胞内部へのデリバリーが可能となり、がん免疫療法の治療効果の向上に大きく貢献すると期待。
研究者からのコメント

左から、児島 准教授、藤井 教授、中瀬 教授
本研究は、本学創薬科学研究所における共同研究の一環として実施しました。今後も、工学、理学の垣根を越えて、部局横断的に創薬科学研究を推進していきたいと考えています。
SDGs達成への貢献
大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。
本研究はSDGs17の目標のうち、「3:すべての人に健康と福祉を」、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献しています。
研究助成資金等
本研究の一部は、科学研究費助成事業(科研費)新学術領域「水圏機能材料」(領域代表:加藤 隆史、東京大学 教授)(20H05232)からの支援を受けて行われました。
用語解説
解説 T細胞
リンパ球の1つ。がん免疫療法では、リンパ節内で活性化、教育されて腫瘍組織に移動する。T細胞は様々な機能をもつサブセットに分類され、がん細胞を攻撃するキラーT細胞、免疫反応を促進するヘルパー細胞、さらに、免疫システムによる攻撃を抑制する制御性T細胞などがある。
関連情報
- 工学研究科物質・化学系専攻 応用化学分野 合成高分子化学研究グループ(松本 章一 研究室)Webサイト
- 理学系研究科 藤井 郁雄 研究室 Webサイト
- 理学系研究科 生物科学専攻 細胞機能制御化学研究室(中瀬 研究室)Webサイト
お問い合わせ
大阪府立大学大学院 工学研究科
准教授 児島 千恵(こじま ちえ)
Tel 072-254-8190 Eメール kojima[at]chem.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。