大阪府立大学

ポリマーの構造を精密に制御 化学変換で様々な機能をもつスマートポリマー材料の開発に成功!―反応を繰り返すたびに付加価値が高まる―

更新日:2022年1月24日

Macromolecular Chemistry & Physicsの表紙の写真本学 大学院 工学研究科 松本 章一 教授、博士前期課程 2年 大佐田 開斗さんらの研究グループは、分子内に含まれる官能基を予めtert-ブトキシカルボニル基(BOC基(解説))で保護した新規モノマー(BHEMA)を合成し、さらに、リビングラジカル重合法を用いて、分子量や分子量分布、末端基、シークエンス構造などが精密に制御されたポリマー(PBHEMA)を合成することに成功しました。

側鎖反応性ポリマーであるPBHEMAは、異解体性接着用のポリマー材料や炭素残渣を生じない熱分解性ポリマーとして注目され、積層コンデンサ製造プロセスをはじめとする様々な分野での利用が検討されています。今回精密に分子構造制御したポリマーを高分子反応によって化学変換することによって、様々な機能を組み込んだ新規な分解性ポリマーを提供することが可能となりました。

これら付加価値を高めた新規分解性ポリマーを利用して、異解体性接着材料や残渣フリーバインダーポリマーの実用化に向けた研究が進められています。

本研究成果は、2021年11月10日にWiley社が刊行する高分子化学と高分子物性の専門誌である「Macromolecular Chemistry & Physics」のオンライン版として先行公開され、同誌Vol.223, No.1 (2022年1月7日発行)に掲載、表紙に選出されました。

論文タイトル「RAFT Polymerization of 2-(tert-Butoxycarbonyloxy)ethyl Methacrylate and Transformation to Functional Polymers via Deprotection and the Subsequent Polymer Reactions」

本研究のポイント

  • 分子内に含まれる官能基をBOC基で保護した新規モノマー(BHEMA)を合成。
  • リビングラジカル重合法を用いて、分子量や分子量分布、末端基、シークエンス構造などが精密に制御されたポリマー(PBHEMA)を合成することに成功。
  • 易解体性接着技術開発に不可欠な接着材料や、電子部品材料製造に欠かせないバインダーポリマーの新規開発により、省資源・省エネルギーの問題解決への貢献が期待される。

SDGs達成への貢献

SDGs3と9のアイコン

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究はSDGs17の目標のうち、「3:すべての人に健康と福祉を」、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献しています。

用語解説

解説 BOC基

有機化合物の官能基の一時的保護の代表的手法であり、有機合成化学、天然物化学、ペプチド化学、機能性高分子材料の分野でよく用いられる。BOCはブトキシカルボニル基の略号で、アミン、アミド、チオール、フェノールなどの活性水素の保護に使用される。多くの場合、tert-ブチル基を含むBOCが用いられ、酸触媒や加熱によってイソブテンガスと二酸化炭素ガスを放出、保護前の活性な官能基構造を復元することができる。

関連情報

お問い合わせ

大阪府立大学 大学院 工学研究科

教授 松本 章一(まつもと あきかず)

Eメール matsumoto[at]chem.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。