大阪府立大学

根寄生雑草防除の標的となる代謝酵素を特定―アフリカの飢餓克服への貢献をめざして―

更新日:2021年12月20日

図本学 大学院 生命環境科学研究科 岡澤 敦司 准教授、太田 大策 教授、馬場 敦也さん(2018年度 博士前期課程 修了)、岡野 ひかるさん(2020年度 博士前期課程 修了)、大阪大学 大学院 工学研究科 新間 秀一 准教授、および神戸大学 大学院 農学研究科 杉本 幸裕 教授らの研究グループは、次世代シーケンサー(解説1)を用いた網羅的な遺伝子発現解析によって、アフリカの農業に大きな被害をもたらしているヤセウツボなどのハマウツボ科の根寄生雑草(解説2)の発芽に重要なグルコースを生成させる貯蔵糖質プランテオース(解説3)を加水分解する代謝酵素OmAGAL2の特定に世界で初めて成功しました。

また、質量分析イメージング(解説4)によって種子中のプランテオースの貯蔵部位の可視化にも成功しました。

この研究成果は、根寄生雑草の発芽に重要な役割を果たすプランテオースの代謝酵素を阻害する化合物の探索を可能にし、アフリカの農業被害の低減や、飢餓の克服への貢献が期待されます。

なお、本研究成果は2021年12月1日に、英国の学術誌「Journal of Experimental Botany」のオンライン速報版で公開されました。

論文タイトル「Involvement of α-galactosidase OmAGAL2 in planteose hydrolysis during seed germination of Orobanche minor」

本研究のポイント

  • 貯蔵糖質プランテオースを加水分解し、根寄生雑草の発芽に必要なグルコースを生成させる代謝酵素OmAGAL2の特定に世界で初めて成功
  • 種子中のプランテオースの貯蔵部位の可視化にも成功
  • プランテオースは、発芽時に胚の近くのアポプラストで代謝酵素に加水分解されることで、発芽に必要なグルコースを生成しているという代謝モデルを提唱
  • プランテオースの代謝を阻害することで、全てのハマウツボ科根寄生雑草の発芽を抑制することにつながると期待される

SDGs達成への貢献

sdgs2番

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究はSDGs17の目標のうち、「2:飢餓をゼロに」等に貢献しています。

研究助成資金等

本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)・国際協力機構(JICA)地球規模課題対応国際科学協力プログラム(SATREPS)(JPMJSA1607)、科学研究費助成事業(科研費)基盤B(JP20H02924)、科学研究費助成事業(科研費)国際共同研究強化B(JP20KK0130)からの支援を受けて行われました。

用語解説

解説1 次世代シーケンサー

ゲノムや mRNA の遺伝子配列を一度に数十億塩基解読可能なシーケンサーで、近年、様々な生物のゲノム解析などに用いられています。

解説2 根寄生雑草

現在、他の植物に寄生する寄生植物が約4,500種確認されています。このうち、作物の根に寄生し、農業に被害をもたらすものを根寄生雑草といいます。根寄生雑草のほとんどがハマウツボ科(Orobanchaceae)の植物であり、ストライガ属(Striga spp.)がアフリカなどで、ハマウツボ属(Orobanche spp.)およびフェリパンキ属(Phelipanche spp.)が地中海沿岸諸国などで農業に被害をもたらしています。

解説3 プランテオース

グルコース、フルクトース、ガラクトースからなる三糖で、ガラクトシル結合の加水分解によって、ガラクトースとスクロースが生じます。スクロースは、加水分解酵素インベルターゼにより、グルコースとフルクトースに分解されます。根寄生雑草の他にゴマ、シソ、ミント、トマトなど一部の植物の種子に含まれることが確認されていましたが、その代謝酵素や生理的役割は不明でした。

解説4 質量分析イメージング

スライドグラス上の組織切片などにレーザーを照射し、生じるイオンを質量分析計で検出することで、特定の化合物の存在部位を可視化する分析手法で、近年、薬物動態や生物中の化合物の挙動を明らかにする手法として注目されています。

関連情報

お問い合わせ

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科

准教授 岡澤 敦司(おかざわ あつし)

Eメール okazawa[at]plant.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。