大阪府立大学

超小型衛星「ひろがり」、ついにミッションを達成! ―「ひろがり」運用報告―

更新日:2021年12月7日

超小型衛星ひろがりのイメージ図

運用中の「ひろがり」(イメージ)

本学 小型宇宙機システム研究センター(略称 SSSRC、センター長 小木曽 望)と室蘭工業大学 航空宇宙機システム研究センター(略称 APReC、センター長 内海 政春)は、新規展開構造物の軌道上計測システムの実証、およびアマチュア無線帯(VHF)での高速通信技術の実証をめざし、超小型衛星「ひろがり」を共同開発しました。

「ひろがり」は2021年2月14日にアメリカのNASAワロップス飛行施設より打ち上げられた後、同年3月14日に国際宇宙ステーション(ISS)から放出され、現在も運用を継続しています。

超小型衛星「ひろがり」のミッションと成果

ミッション1: ミウラ折り板構造の展開・形状計測 ―将来の大面積構造を「ひろげる」―

近年、人工衛星はより高度なミッションを行うために、太陽電池パネルなど輸送制約において高い収納性が求められる大面積構造物搭載の必要性が増加しています。これを実現するためには、厳しい宇宙環境下で大面積構造物が形状精度要求を満たせているかどうかを軌道上で計測する必要があります。

「ひろがり」では、折り紙工学におけるミウラ折りを発展させ、厚みを考慮した二次元展開板構造物を隙間なく収納し、宇宙空間で平面展開します。また、二次元格子を利用した光学的な表面形状計測システムを搭載し、その有用性を軌道上実証します。

宇宙空間でのミウラ折り構造物の応用例は過去にもありましたが、板厚を考慮できた折り紙工学の視点では世界初の実証です。

ミッション2:アマチュア無線帯での高速データ通信―アマチュア無線の幅を「ひろげる」―

従来の多くのアマチュア無線衛星は UHF、VHFで1.2kbps、9.6kbps の通信速度を利用していました。これらには、主にパケットロスが生じた際に地球局からの再送要求が必要となるAX.25が用いられ、衛星運用のコストが大きくなる要因になっていました。

そこで「ひろがり」では、より高速な13.6kbps GMSK、19.2kbps 4FSKを採用し、さらに、誤り訂正能力を持つリード・ソロモン符号を用いたプロトコル、およびリード・ソロモン符号に畳み込み符号を組み合わせたプロトコルを採用しました。これらの通信技術の有用性を実証し、より高効率な通信をめざします。

ミッション3:メッセージボックスサービス―アマチュア無線での交流を「ひろげる」―

メッセージボックスサービスを提供するためテスト運用を実施し、世界各国のアマチュア無線家の方々の協力のもと、サービスが機能することを確認しました。また、アマチュア無線家ではない方にも交流を「ひろげる」ために幅広い世代からメッセージを募集し、「ひろがり」を通して世界中へ発信しています。

今後は、定常的なサービスをめざして運用を本格化していきます。なお、現在は運用を本格化し、アマチュア無線家の方々へ定期的にサービスを開放しています。

運用に関わる学生のコメント

工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 航空宇宙工学分野 博士前期課程 2年 山田 将史 さん

山田 将史さん写真開発に行き詰ったり、初期運用でトラブルがあったりと、一筋縄ではいかない「ひろがり」プロジェクトでしたが、ミッション成功まで漕ぎ着けることができ、大変感慨深く思います。多くの方々がご支援くださったからこそ、「ひろがり」はここまで成功できました。今後もさらなる成果を出し、お世話になった方々に恩返しできるよう、情熱をもって頑張っていきたいと思います。

工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 航空宇宙工学分野 博士前期課程 1年 仲瀬 寛輝 さん

仲瀬 寛輝さんの写真これまで4年間かけて開発してきた「ひろがり」が、今回このような成果を上げることができ、非常に喜ばしく思います。私自身初めての衛星運用ということもあり、いろいろな不安や苦悩がありましたが、メンバーの熱い姿勢や先生方・その他たくさんの方の声援にとても支えられました。本当にありがとうございました。これからも「ひろがり」の運用を頑張って続けていきたいと思います。

工学域 電気電子系学類 情報工学課程 4年 森瀧 瑞希 さん

森瀧 瑞希さんの写真数々の困難があったひろがりプロジェクトですが、ミッションの成功まで漕ぎ着けることができ、非常に嬉しく思います。運用初期に1週間通信ができなかったトラブルは非常に印象強く、このままミッションができないのではないかという不安が募る日々でしたが、多くの方々からの応援の言葉が励みになりました。ひろがりが最大限役割を果たせるよう、残りの運用期間も引き続き尽力する所存です。

大阪府立大学 小型宇宙機システム研究センターについて

学生が中心となって超小型人工衛星・小型ロケットなどの宇宙機を開発しているセンターです。1年生から大学院生までがお互いに協力し、活動しています。学生がカリキュラムをつくり、上級生が下級生に対して宇宙機の開発に必要な技術を教える活動や、地域の方々に宇宙を身近に感じてもらうためのアウトリーチ活動も行っています

プロジェクト資金の支援に対するお礼

超小型衛星「ひろがり」の開発ならびに大阪府立大学小型宇宙機システム研究センターの活動に対しては、「ふるさと納税制度」を活用した大阪府立大学への寄附制度である「つばさ基金」を通じて、学内外の多くの方々から寄附金をいただきました。また、室蘭工業大学ではクラウドファンディングを実施し、「ひろがり」プロジェクトに対する多大な支援と声援が集まりました。支援いただいた皆さまには、厚く御礼申し上げます。

SDGs達成への貢献

SDGsアイコン7、17

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本プロジェクトはSDGs17のうち、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」、「17:パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献しています。

関連情報

お問い合わせ

大阪府立大学 小型宇宙機システム研究センター長

教授 小木曽 望

Tel 072-254-9245 Eメール kogiso[at]aero.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。