大阪府立大学

世界初 主要イヌアレルゲンCan f 1の立体構造が明らかに! イヌアレルギーに対する低アレルゲン化ワクチン開発に向けた大きな一歩!

更新日:2021年11月8日

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アレルギー反応と免疫寛容機構

本学 生命環境科学研究科 乾 隆 教授(21世紀科学研究センター 創薬科学研究所 所長、研究推進本部 副本部長、研究推進機構 副機構長、学長補佐)、中辻 匡俊さん(2017年度 博士後期課程 修了)、および杉浦 慶亮さん(2017年度 博士前期課程 修了)らの研究グループは、独立行政法人 国立病院機構 相模原病院 臨床研究センターの福冨 友馬 医師との共同研究により、近年増加傾向にあるイヌアレルギーにおける主要アレルゲンであるCanis familiaris allergen 1(Can f 1)の立体構造をX線結晶構造解析により、世界で初めて明らかにすることに成功しました。

また、このCan f 1の構造を用いて、アレルギーの原因であるヒトIgE抗体(解説1)が結合するCan f 1内のエピトープ(解説2)を予測し、その予測部位にアミノ酸変異を導入することにより、ヒトIgE抗体との結合能を低下させた変異型Can f 1の作製に成功しました。この変異型タンパク質は、イヌアレルギーの治療において、アナフィラキシー誘発活性を低減させた「低アレルゲン化ワクチン」開発の候補タンパク質となる可能性があります。

なお、本研究の成果は、出版社Wileyが刊行する学術雑誌「The FEBS Journal」にて、2021年10月26日にオンライン掲載されました。

論文タイトル「Structure-based prediction of the IgE epitopes of the major dog allergen Can f 1」

本研究のポイント

  • 主要イヌアレルゲンCanis familiaris allergen 1(Can f 1)のX線結晶構造解析
  • Can f 1におけるヒトIgE抗体エピトープの予測とアミノ酸変異導入(変異型Can f 1の作製)
  • 様々なアレルギー治療に適用可能な変異型Can f 1のヒトIgE抗体に対する低い結合親和性を利用した「低アレルゲン化ワクチン」開発に向けた基盤データの収集

研究者からのコメント

先生の写真

(左から)中辻 匡俊 さん、乾 隆 教授

イヌ・ネコアレルギーの治療法開発に向けた今後の研究にご期待ください。

SDGs達成への貢献

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究はSDGs17のうち、「3:すべての人に健康と福祉を」「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」「11:住み続けられるまちづくりを」等に貢献しています。

研究助成資金等

本研究の一部は、科学研究費助成事業(科研費)挑戦的研究(萌芽)(17K19329)からの支援を受けて行われました。

用語解説

解説1 IgE抗体(免疫グロブリンE)

抗体の種類の1つであり、肥満細胞や好塩基球の表面に保持されている。外部から体内に侵入したアレルギーの原因物質であるアレルゲンに結合し、細胞に対してヒスタミン等の産生を促すことでアレルギー反応を引き起こす。

解説2 エピトープ

抗体が特異的に認識して結合する抗原の特定アミノ酸領域のこと。

関連情報

お問い合わせ

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科

教授 乾 隆(いぬい たかし)

Tel 072-254-9473 Eメール inuit[at]bioinfo.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。