世界初! 宇宙空間の多くの分子からの電波を同時に受信するシステムの開発に成功― 宇宙の進化や星・惑星が形成されるメカニズムの解明に向けて ―
更新日:2021年7月8日
大阪府立大学大学院 理学系研究科の宇宙物理学研究室と、国立天文台のアルマプロジェクト・先端技術センターは、星が生まれる現場にある様々な分子から放出される電波を、今までと比べて数多く同時に観測できる新しい受信システムの開発・試験観測に世界で初めて成功しました。このシステムを応用することにより、宇宙の進化や星・惑星が形成されるメカニズムの研究に大きな進歩がもたらされると期待されます。
本研究成果は、2本の論文として「日本天文学会の欧文研究報告(Publications of the Astronomical Society of Japan)」で公開されました。
- 論文タイトル「Development of a new wideband heterodyne receiver system for the Osaka 1.85-m mm–submm telescope: Receiver development and the first light of simultaneous observations in 230-GHz and 345-GHz bands with an SIS-mixer with 4–21 GHz IF output」(Oxford University Press Webページ)
- 論文タイトル「Development of a new wideband heterodyne receiver system for the Osaka 1.85-m mm-submm telescope — Corrugated horn & Optics covering 210–375 GHz band —」(Oxford University Press Webページ)
(注)上記2本の論文筆頭著者の増井 翔、山﨑 康正の両名は、本学の学生です。
論文掲載誌 「日本天文学会の欧文研究報告(Publications of the Astronomical Society of Japan)」
- プレスリリース全文(1015KB)
研究のポイント
- 観測できる電波の範囲(周波数帯域幅)を従来の数倍に大きく広げた受信システムの開発に成功
- その受信システムを大阪府立大学の1.85m電波望遠鏡に搭載し、実際の天体からの電波の試験観測に初めて成功
研究・開発に携わった学生のコメント
理学系研究科 物理科学専攻 宇宙物理学研究室 博士後期課程 2年 増井 翔
本広帯域受信機の開発の初期から観測の成功までに携わることができて、非常に貴重な体験をすることができました。お世話になった多くの方々には大変感謝しております。
これらの経験を活かし、今後も装置開発の観点から、さらなる天文学の発展に向けて精進していきたいと思います。
理学系研究科 物理科学専攻 宇宙物理学研究室 博士後期課程 1年 山﨑 康正
自分達で作り上げた受信機でオリオン座からの電波を初めて受信し、メンバーと喜びを分かち合えた瞬間は感無量でした。
この成果は関係する多くの方々の協力によって成し遂げられたものだと感じています。皆様に心より感謝するとともに、これからも天文学に貢献できるよう精進したいと思っています。
SDGs達成への貢献
大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。
本研究はSDGs17のうち、「4:質の高い教育をみんなに」「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」等に貢献しています。
研究助成資金等
本研究は、新学術領域研究・計画研究「巨大分子雲における星団形成機構の観測的解明(研究代表:大西利和)」(科学研究費助成事業(科研費)JP18H05440)の成果です。
また、本研究の一部は、科学研究費助成事業(科研費)(JP20J23670、JP15K05025、JP26247026)、自然科学研究機構国立天文台研究交流委員会からの支援も受けて行われました。
関連情報
(注)刊行物のPDFファイル「ALMA2 Project ―アルマ望遠鏡が切り開く2020年代の科学のフロンティア」をご覧ください。2020年代にアルマ望遠鏡で期待される天文学研究の新展開を技術的観点も含めてまとめたものです。関連するセクションは、「5.2.2.5 アルマ望遠鏡受信機開発を通じた大学との関係強化」「5.2.3.1 次世代受信機開発」など。
お問い合わせ
大阪府立大学 大学院 理学系研究科
教授 大西 利和
Tel 072-254-9727 Eメール ohnishi[at]p.s.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。