ビーカーの中の錬金術!!!有機‐無機ハイブリッド結晶が単結晶のような機能を発現! ―太陽電池などへの応用も期待できる新技術―
更新日:2021年6月29日
大阪府立大学(学長:辰巳砂 昌弘)大学院 工学研究科の岡田 健司 准教授、深津 亜里紗 助教、高橋 雅英 教授らの研究グループは、砂や塩、サイコロのように粒子の形が等方的な有機-無機ハイブリッド(今回は金属有機構造体(解説1))結晶を、ビーカーの中で反応させるだけの簡便な手法で、基板上で配向(解説2)させる技術を開発しました。等方的形態の結晶粒子は、これまで結晶の向きを揃えることが困難とされてきましたが、結晶構造の微細な違いを利用して3次元的に結晶方位が配向した薄膜の形成を実現しました。
さらに、この金属有機構造体結晶中で電子が流れる経路(導電パス)を設計、制御する手法へと発展させ、特定の方向に高い導電性を示す薄膜を実現しました。配向多結晶薄膜(解説3)において電気特性を空間的に自在に設計できる本材料は、分子デバイスや超高集積デバイスの心臓部となることが期待されます。また、今回開発した技術は汎用性が高いことから、次世代太陽電池の主材料として期待されているペロブスカイト結晶の配向に適用することで、太陽電池の高効率化・耐久性向上なども期待できる新技術となります。
なお、本研究成果は、日本時間2021年6月4日(金)に英国の英国王立化学会が刊行する学術雑誌「Journal of Materials Chemistry A」誌のオンライン速報版で公開されました。また、本論文は査読者の推薦によりHot paperに選出されました。
論文タイトル 「Oriented growth of semiconducting TCNQ@Cu3(BTC)2 MOF on Cu(OH)2: crystallographic orientation and pattern formation toward semiconducting thin-film devices」
本研究のポイント
- 等方的形態の有機-無機ハイブリッド結晶を基板上で配向させる技術を開発
- 電気特性を空間的に自在に設計できるため、特定の方向に(最も電気を流さない方向と比較して)約10倍高い導電性を示す薄膜を実現
- 次世代太陽電池の材料であるペロブスカイトなど機能が優れる有機―無機ハイブリッド結晶を配向することで高機能化する新技術として期待
SDGs達成への貢献
大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。
本研究はSDGs17のうち、「7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」と「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献しています。
研究助成資金等
本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)(JPMJPR19I3)、科学研究費助成事業(科研費)若手研究(19K15292)、基盤研究A(20H00401)、泉科学技術振興財団 研究助成からの支援を受けて行われました。
用語解説
解説1 金属有機構造体
金属イオンと有機配位子により形成されるネットワーク構造をもつナノ多孔性材料
解説2 配向
微結晶の向きが,特定の方向に揃っていること
解説3 配向多結晶薄膜
一つの結晶(単結晶)ではなく多くの微結晶の集合体により形成される薄膜。一般的な多結晶薄膜では微結晶の向きは揃っていないが、配向多結晶薄膜では薄膜全体で微結晶の向きが揃っている。
関連情報
- 大面積でナノサイズの穴が全て同じ方向を向いた多孔質MOF薄膜の合成に、世界で初めて成功(2016年12月6日プレスリリース)
- 大阪府立大学大学院 工学研究科 物質・化学系専攻 マテリアル工学分野 ナノテク基盤材料研究グループ Webサイト
お問い合わせ
大阪府立大学 大学院 工学研究科
准教授 岡田 健司(おかだ けんじ)
Tel 072-254-9748 Eメール k_okada[at]mtr.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。