大阪府立大学

異種材料接合に重要となる材料の内部や界面構造を 非破壊検査法によって解明―3次元X線イメージング法をエポキシモノリス材料に適用―

更新日:2020年9月25日

大阪府立大学 大学院 工学研究科 物質・化学系専攻 松本章一教授、鈴木祥仁助教、博士前期課程2回生 坂田奈菜子さんの研究グループは、株式会社リガク X線研究所 武田佳彦博士および株式会社MORESCO ホットメルト事業部 小寺 賢博士との共同研究によって、非破壊検査法のひとつである3次元X線イメージングの手法を駆使して、ガラス板や金属板上の多孔質エポキシモノリス層に熱可塑性樹脂を熱溶着した接合試験片の内部および界面構造を直接観察することに成功しました。

カップリング剤を使用して基材表面を修飾することで、接着層として作用するエポキシモノリス材料とガラスや金属などの被着体との間に強固な共有結合を形成させることができ、樹脂とモノリス間で作用するアンカー効果との相乗効果によって、高い接着強度と信頼性をもつ異種材料接合が実現できることを初めて示しました。

研究概要

近年、使用する資源とエネルギーを減らし、環境負荷をできる限り小さくすることを目的として、自動車や航空機を含む多くの分野で材料の軽量化やマルチマテリアル化が進んでいます。同時に、様々な材料を組み合わせて突出した機能を発揮させる複合化技術が進展し、金属―樹脂接合に代表される異種材料間の接着接合のニーズが急増し、実用化に向けた応用研究が盛んに行われています。松本教授らは、多孔質有機材料であるエポキシモノリスを使用した新しい異種材料接合法(モノリス接合法)を独自に開発してきました。今回の成果は、これら異種材料接合に関する研究開発を一気に加速すると同時に、今後の革新的な接着・接合手法の応用開発や実用化に繋がっていくことが期待されています。

本研究は界面化学専門誌「Langmuir」に2020年9月13日付でオンライン版として公開され、また同誌Vol.36, No.37の表紙として採択されました。

論文タイトル「Interfacial Structure Control and Three-Dimensional X-ray Imaging of an Epoxy Monolith Bonding System with Surface Modification」

研究成果のポイント

 表面処理したガラス板および金属板上にエポキシモノリス(解説1)を作製、さらにその上に熱可塑性樹脂を熱溶着した接着接合物のエポキシモノリス内部ならびにガラス板や金属板との界面を3次元X線イメージング(解説2)によって非破壊的に観察することに成功(図1)

 シランカップリング剤およびホスフィンカップリング剤(解説3)による基材表面修飾が、熱可塑性樹脂(PETなど)との異種材料接合(解説4)の高強度化に有効に作用していることを、引張試験による機械物性の評価結果に加えて、接合界面の構造を直接可視化して実証(図2)

SDGs達成への貢献

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究はSDGs17のうち、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」や「12:つくる責任 つかう責任」等に貢献しています。

用語解説

解説1 モノリス

一つの石を意味し、一般には単一の巨大岩石、地形、建材などの天然あるいは人工構造物に対して用いられる用語であるが、材料化学の分野では、三次元的にそれぞれ連続した網目骨格と空隙を有する多孔材料のことを指す。エポキシ樹脂で作製されたモノリスは、分離用カラムの充填剤として利用されている。

解説2 3次元X線イメージング

物体を透過するX線を被写体に投射し、透過したX線強度の差を検出して被写体内部を観察するレントゲン撮影で、被写体を回転させて180度方向からのX線透過像のデジタルデータをコンピュータ処理(CT; computed tomography)することで3次元情報を得る内部構造の非破壊な分析手法。

解説3 カップリング剤

分子内に有機材料および無機材料と結合する官能基の両方をあわせもつカップリング剤は、有機材料と無機材料を組みあわせた有機無機ハイブリッド材料の設計に欠かせない試薬で、表面改質、複合材料の機械的強度や接着性の向上などに使用される。ガラスや金属酸化物にはシランカップリング剤が、ステンレスなどの金属にはホスフィンカップリング剤が主に使用される。

解説4 異種材料接合

異なる特性や機能をもつ材料を適材適所で使用し、高機能・高性能化、多機能化するためには、異なる材料間での接着・接合(すなわち異種材料接合)が欠かせないが、その実現は容易ではなく、早急に解決すべき課題のひとつとなっている。特に、金属、無機材料(セラミクス、ガラス)と有機材料である高分子(樹脂)との接着・接合は材料の軽量化、低コスト化に欠かせないため、新しい異種材料接合法の開発が盛んに進められている。

関連情報

お問い合わせ

大阪府立大学大学院 工学研究科

教授 松本 章一

Tel 072-254-9292 Eメール matsumoto[at]chem.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。