大阪府立大学

ケイ素化合物の循環システム構築の鍵となる 革新的触媒技術の開発―これまで不可能とされてきたケイ素化合物のリサイクル技術の実現に前進―

更新日:2020年9月16日

大阪府立大学 理学系研究科 亀尾 肇 准教授、松坂 裕之 教授、トゥールーズ III ポール・サバティエ大学 Didier Bourissou 教授の研究グループは、パラジウムまたはニッケル分子性触媒とLewis 酸の協同効果を鍵とすることで、最も強固なケイ素‒フッ素結合とされているフルオロシランの触媒的な変換に世界で初めて成功しました。

ケイ素にはフッ素などの電気陰性な原子との間に強固な結合を形成する特性があります。そのため、ケイ素化合物は高耐久性、高耐熱性の高さが求められる半導体や医療素材などで使用されています。一方で、強固なケイ素‒フッ素結合を変換する技術は乏しく、リサイクルが困難とされてきました。最も強固なケイ素‒フッ素結合を変換する本技術は、ケイ素化合物のリサイクル技術への応用が期待されており、さらにはその循環システム実現のための基礎技術となります。

本研究成果は、2020 年7 月24 日に米国化学会誌であるJournal of the American Chemical Societyのオンライン速報版で公開され、カバーピクチャとしてハイライトされました。

論文タイトル「Fluorosilane Activation by Pd/Ni→Si–F→Lewis Acid Interaction: An Entry to Catalytic Sila-Negishi Coupling」

本取り組みのポイント

  • フルオロシランを用いた根岸クロス カップリング反応の図

    フルオロシランを用いた根岸クロスカップリング反応(解説1)

    ケイ素が形成する最も強固なケイ素-フッ素結合を触媒的に変換することに世界に先駆けて成功
  • ケイ素-フッ素結合切断の鍵反応中間体の単離および理論計算による反応解析により結合の切断機構を完全解明
  • ケイ素材料のリサイクル技術への応用が期待される

研究助成資金等

本研究の一部は、科学研究費助成事業(科研費)基盤研究(C)(18K05151)、ENEOS 東燃ゼネラル研究奨励・奨学会、東京応化科学技術振興財団からの支援を受けて行われました。

SDGs達成への貢献

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。
本研究はSDGs17 のうち、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」等に貢献しています。

用語解説

解説1 クロス カップリング反応

2つの異なる化学物質を選択的に結合させる反応。パラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応の登場により、様々な医薬品や機能性材料の合成が実現された。その革新的な技術が評価されて、カップリング反応の研究を特に先導した研究者(鈴木 教授、根岸 教授、Heck教授)には2010年にノーベル化学賞が授与されている。

お問い合わせ

大阪府立大学 大学院 理学系研究科

准教授 亀尾 肇

Tel 072-254-9887 Eメール h.kameo[at]c.s.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。