大阪府立大学

アルマ望遠鏡が追う星のヒナ誕生までの10万年―星の卵の「国勢調査」―

更新日:2020年8月7日

大阪府立大学 理学系研究科 徳田 一起 客員研究員(兼・国立天文台 特任研究員)と名古屋大学 理学研究科 立原 研悟 准教授らの研究グループは、法政大学、東北大学、九州大学、パリサクレー大学などと共同で、おうし座方向に存在する「星(恒星)を作る材料」が濃く集まった星の卵とも言える「分子雲コア」(解説1)の成長の様子を調べるために、アルマ望遠鏡(解説2)を構成するモリタアレイで多数の卵を観測する「国勢調査」(解説3)を行いました(図1 参照)。

その結果、分子雲コアの中心部が徐々に濃くなり、ある密度(100万個/cc)を超えると、自身の重力によって星へと急成長する様子を世界で初めて精密に測定することに成功しました。また、観測した分子雲コアのうちの1つが、星のヒナが誕生した瞬間の姿に相当する可能性が高いことも分かりました。これらは分子雲コアが10万年以上の時を経て星へと至る瞬間までを克明に記録した成果と言えます。

なお、本研究成果は、2本の論文として米国物理学会が刊行する天文学専門誌「The Astrophysical Journal」および「The Astrophysical Journal Letters」に8月7日 16時(日本時間)にそれぞれ掲載されます。

論文タイトル「FRagmentation and Evolution of Dense Cores Judged by ALMA (FREJA). I (Overview). Inner ∼1000 au Structures of Prestellar/Protostellar Cores in Taurus」

論文タイトル「A Low-velocity Bipolar Outflow from a Deeply Embedded Object in Taurus Revealed by the Atacama Compact Array」

報道解禁日時

日本時間2020年8月7日 16時(米国時間:8月7日 3時)

(注意)報道解禁日時以前の公表は禁じられています。

研究助成資金等

本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金 (No.18K13582、18H05440)、国立天文台 ALMA共同科学研究事業(2016-03B)からの支援を受けて行われました。

用語解説

解説1 分子雲コア

宇宙空間には星の材料となる水素原子/分子を主成分としたガスが漂っています。その中でも特に水素分子が豊富に存在する場所が分子雲であり、さらに濃くなった場所は分子雲コアと呼ばれています。これはいわゆる星の卵であり、ガスがさらに収縮することによって、太陽のような質量を持つ単独の星やその連星が誕生すると考えられています。

解説2 アルマ望遠鏡

東アジア(日本・台湾・韓国)・北米(アメリカ・カナダ)・ヨーロッパが共同で運用する国際的な望遠鏡プロジェクトです。チリ アタカマ砂漠の標高約5,000mの場所に設置されており、合計66台のパラボラアンテナを組み合わせることにより高い解像度の天体画像を得ることができます。本研究では、日本が開発し、よりなめらかな天体の構造の観測に適したアタカマ・コンパクト・アレイ(愛称「モリタアレイ」)の口径7mアンテナのみを使用しています。

解説3 国勢調査

天文観測では一般的に1つの天体の成長を直接調べることはできません。その時間スケールが人間の寿命に比べて遥かに長いためです。そのためある一定の条件の下で複数の天体や空のある場所を広く観測し(掃天観測もしくはサーベイ観測と呼ばれます)、異なる成長段階にある天体を俯瞰することによりその一生を推測するという手法がしばしば用いられます。この研究では、おうし座方向の分子雲を1つの国に見立て、その中に存在する星の卵を一斉に調べることから、国勢調査と呼ぶことにしました。

関連情報

お問い合わせ

大阪府立大学大学院理学系研究科(兼 国立天文台 特任研究員)

客員研究員 徳田 一起(とくだ かずき)

Tel 080-1464-3757 Eメール tokuda[at]p.s.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。