大阪府立大学

石炭火力発電所における負荷変動に対応した配管余寿命診断技術の開発についてNEDO公募事業に採択

更新日:2020年7月28日

概要

大阪府立大学大学院 工学研究科 柴原 正和 准教授、東京理科大学、国立大学法人 熊本大学、近畿大学、非破壊検査株式会社、中国電力株式会社は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/石炭火力の負荷変動対応技術開発」(事業費:311,000,000円/3年、うち大阪府立大学48,000,000円)に応募し、採択されました。

本研究開発では、再生可能エネルギーの導入拡大により増加する石炭火力発電所の負荷変動に対応した配管余寿命診断技術の開発を実施します。

背景

石炭火力発電は、これまで主にベースロード電源として活用してきましたが、再生可能エネルギーの導入拡大により出力調整が増加しており、将来的には起動停止を含めた運転も考えられます。

一定の出力を継続した運転を前提とする石炭火力発電所において、こうした出力調整等は、配管を変形させるなどの影響を及ぼし、余寿命評価の精度を低下させることとなります。

具体的には、主蒸気配管などの大径管は、配管内部からの圧力に加え、出力調整等から生じる温度変化により配管に曲げやねじりに起因した応力が発生するとともに、クリープ(解説)疲労に伴う損傷が発生する可能性があります。しかし現状では、それらの応力状態に対して、高精度な余寿命評価を行うことができません。

また、起動停止や負荷変動が余儀なくされると、ガスや石油に比べて燃焼不安定や燃焼ガスの偏流が発生しやすく、ボイラ伝熱管において異常過熱(ホットスポット)が発生する可能性が高くなります。これによりボイラ伝熱管にクリープ損傷や熱疲労による亀裂の発生が多くなることが懸念されています。ボイラ全体の損傷のうち約45%を伝熱管によるトラブルが占めていますが、超々臨界圧ボイラ伝熱管の高温部に通常利用されているステンレス鋼製伝熱管では、破壊直前まで膨らみや微小な空洞形成等、形状変化がほとんど生じないため、これまで有効な検査手法が確立されていませんでした。また、検査対象範囲が広いことなどから、現状では伝熱管に対し広範囲に短時間で信頼性の高い検査を行うことができません。

研究目標・実施項目

こうした課題の解決に向け、本研究では、大径管とボイラ伝熱管を対象とした新たな寿命診断手法の開発に取り組んでまいります。

大径管については、実際の配管に作用する複雑な応力状態を再現する装置を開発し、クリープ疲労試験を行うことで、寿命を高精度に評価する手法を開発します。さらに、運転中の大径管で計測可能なひずみセンサーを開発し、計測したひずみ量と上記で開発した評価手法を用いて、高速・高精度に余寿命診断する解析技術を開発します。

また、ボイラ伝熱管については、伝熱管を模擬した試験片にて内圧クリープ試験を実施し、超電導磁気センサーによる測定を行います。その測定データと組織や磁気特性等の観察結果をもとに超電導磁気センサーが捉えている劣化要因を調査することにより、劣化診断における超電導磁気センサーの有効性を検証します。また、測定データから余寿命診断に必要となる時間と劣化の関係を明らかにし、寿命評価手法を開発します。

2020年7月から3年の計画で次の研究実施項目を推進していきます。(詳細は別紙「研究開発」を参照)

  1. 高温曲げねじりクリープ疲労寿命評価法の研究開発
  2. 高温3軸薄膜静電容量型ひずみ計の研究開発
  3. 高温内圧曲げねじりクリープ疲労大規模解析法およびそれを用いたデジタルツイン技術の研究開発
  4. ステンレス製ボイラ伝熱管の超電導磁気センサーによる余寿命診断技術開発
  5. ステンレス製ボイラ伝熱管クリープ損傷の超電導磁気センサー劣化判定要因の解明
  6. 超電導磁気センサー非破壊検査システム開発及びマスターカーブ作成
  7. 実機適用可能性評価

本技術は石炭火力発電所の大径管およびボイラ伝熱管の適切な交換時期の把握につながるため、補修コストの削減および計画外停止の未然防止による信頼性の向上を図ることができるものと考えています。

別紙 研究開発の概要(541KB)

用語解説

解説 クリープ

高温下において物体に一定の応力を加えると、時間とともに変形していく現象。

お問い合わせ

大阪府立大学 工学研究科 航空宇宙海洋系専攻

准教授 柴原 正和 

Tel 072-254-9345 Eメール shibahara[at]marine.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。