大阪府立大学

顧みられない熱帯病「アフリカ睡眠病」の新薬開発に向けた一歩―寄生性原虫Trypanosoma brucei におけるGMP還元酵素が、多量体構造の変化に起因したアロステリック調節を行うことを明らかに―

更新日:2020年4月17日

図1.Trypanosoma bruceiと赤血球の写真

図1.Trypanosoma brucei(手前)と赤血球(過去の共著論文J. Exp. Med., 192(9), 2000の表紙より転用)

大阪府立大学 大学院 生命環境科学研究科 応用生命科学専攻の乾 隆 教授(21世紀科学研究センター創薬科学研究所所長、研究推進本部副本部長)らの研究グループ(今村 章 博士後期課程3年(当時)(「博士課程教育リーディングプログラム」(参考)第1期履修生)、および岡田 哲也 博士研究員が共筆頭著者)は、英国のDiamond Light Sourceの井上 勝晶 博士ら、大阪大学 工学研究科の内山 進 教授ら、およびケニアのAfrican Union/NEPADのKubata B. Kilunga博士との共同研究により、人獣共通の致死性感染症「アフリカトリパノソーマ症(アフリカ睡眠病)」(解説1)の新薬開発に貢献する研究として、Trypanosoma brucei(図1)(解説2)におけるGMP還元酵素のアロステリック制御メカニズムに関する新しい知見を得ました。

同研究は、Nature Publishing Groupが刊行する学術雑誌「Nature Communications」に、4月15日18時(日本時間)に掲載されました。

論文タイトル「Allosteric regulation accompanied by oligomeric state changes of Trypanosoma brucei GMP reductase through cystathionine-β-synthase domain.」

SDGs達成への貢献

SDGs3のアイコン

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究はSDGs17のうち、「3:すべての人に健康と福祉を」に貢献しています。

用語解説

解説1 アフリカトリパノソーマ症

症状の進行に伴い、ヒトにおいては特有の睡眠障害が認められることから「アフリカ睡眠病」とも呼ばれる。世界保健機構(WHO)によって「顧みられない熱帯病」の一つに認定されており、その克服に向けて国際的に研究が進められている。

解説2 Trypanosoma brucei

単細胞の原始的な真核生物で、長さ10 µm~30 µm、太さ数µmと細長く、鞭毛を使って活発に動き回る(図1)。アフリカ大陸の赤道周辺に生息する媒介昆虫ツェツェバエを介して、ヒトや家畜へと寄生する。感染当初は血流中で増殖・減少を繰り返すが、やがて脳脊髄液や脳内へ移行することにより様々な神経症状を引き起こす。

参考 「博士課程教育リーディングプログラム」

大阪府立大学と大阪市立大学が共同で運営しているプログラムで、正式なプログラム名称は博士課程教育リーディングプログラム「システム発想型物質科学リーダー養成学位プログラム」(略称「SiMS(シムス)」)。

産業が競争力を高め、イノベーションにより持続型社会を実現するため、グローバルリーダーシップを発揮できる博士研究人材が強く求められていることを背景に設計した、産業界を牽引するグローバルリーダーを育成するための5年一貫の博士学位プログラムです。

お問い合わせ

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 応用生命科学専攻

教授 乾 隆

Tel 072-254-9473 Eメール inuit[at]bioinfo.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。