大阪府立大学

小胞体ストレス応答で働くセンサータンパク質「IRE1」の新たな仕組みを発見

更新日:2019年10月24日

大阪府立大学 生命環境科学研究科 応用生命科学分野 三柴 啓一郎 准教授、岩田 雄二 准教授、望月 知史 講師、松村 篤 講師、西岡 七海 大学院生、平田 梨佳子 大学院生、小泉 望 教授の研究グループは、「小胞体ストレス応答」を誘導するセンサータンパク質「IRE1」が植物の発達過程で働く新しい仕組みを発見しました。

研究成果のポイント

IRE1AとIRE1B遺伝子が壊れたシロイヌナズナ変異体の写真

IRE1AとIRE1B遺伝子が壊れたシロイヌナズナ変異体
上段:IRE1C対立遺伝子の両方が正常な個体
下段:IRE1C対立遺伝子の片方が壊れた個体

  • センサータンパク質「IRE1」のこれまで知られていなかった役割を発見
  • 発達過程では異常タンパク質の蓄積が無くてもIRE1が機能することを明らかに
  • IRE1が生物の発達で働く仕組みの解明につながる成果

IRE1 は異常タンパク質をセンサー領域で感知して小胞体ストレス応答を誘導します。一方、IRE1 は小胞体ストレス応答だけでなく、生物の発達にも関わることが知られていましたが、具体的にどのような働きをするのかは謎でした。今回の研究で、シロイヌナズナのセンサー領域を持たない IRE1C が花粉形成などの発達に関与することが明らかになり、発達過程で異常タンパク質が作られなくても IRE1 が働くことを証明しました。

研究成果の新規性と今後の発展について

分泌タンパク質が大量に作られる動物組織では、IRE1が働くことが報告されています。従来は、この時に異常タンパク質が作られることでIRE1が働くものと考えられていました(イメージ図 中央)。今回の研究で、センサー領域を持たない(異常タンパク質を感知出来ない)IRE1が植物の発達過程で働くことが明らかになったことから、発達の過程で異常タンパク質が作られなくてもIRE1が働く仕組みが予想されました(イメージ図 右側)。

小胞体ストレス応答の異常は、糖尿病や神経変性疾患、脂質異常症などの疾患と関係することから、IRE1の働きはとても注目されています。これまでIRE1は異常タンパク質のセンサーであることで注目されてきましたが、今回の研究では異常タンパク質を必要としないIRE1の働きが、植物の発達に貢献していることを示しました。このようなIRE1の働きをさらに研究することで、IRE1が生物の発達で働く仕組みの解明につながると考えられます。

通常の組織とたんぱく質が大量に作られる組織の図

イメージ図

本研究成果は、2019年10月10日に生命科学系ジャーナル「Life Science Alliance」にオンライン掲載されました。

論文タイトル「 Unfolded protein-independent IRE1 activation contributes to multifaceted developmental processes in Arabidopsis」

研究助成等

本研究は、JSPS科学研究費補助金(17K07610、26450010)、武田科学振興財団 ライフサイエンス研究奨励、および、松籟科学技術振興財団 研究助成の支援を受けて行われました。

お問い合わせ

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 応用生命科学分野

准教授 三柴 啓一郎

Tel 072-254-9416 Eメール mishiba[at]plant.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。