光のスピンが光渦によるナノ粒子の公転運動を加速する新原理を解明!
更新日:2019年7月5日
大阪府立大学(学長 辰巳砂 昌弘)LAC-SYS研究所のチーム(大阪府立大学大学院 理学系研究科 田村 守 特認助教、飯田 琢也 准教授・所長、大阪府立大学大学院 工学研究科 床波 志保 准教授・副所長)は、千葉大学(学長 徳久 剛史)大学院工学研究院/分子キラリティー研究センターの尾松孝茂 教授・センター長との共同研究により、光渦の下でのナノ粒子の公転運動が、光のスピンによって加速・減速される新原理を世界に先駆けて解明しました。
本研究のポイント
従来の研究で知られていたこと
- 光渦は軌道角運動量を持ち、トラップした物体を太陽の周りを回る地球の様に公転運動させ、また円偏光の光はスピン角運動量を持ち、トラップした物体をその場で自転させる。
- 大きな物体を光渦でトラップした場合は、その物体はその場で自転し、軌道角運動量が自転運動を誘起する。
今回の新発見
- スピン角運動量を持つ円偏光の光によって、粒子の公転運動を加速・変調する粒子操作の新原理を発見
今後どうなる?
- 物質の光操作技術の更なる高度化に貢献
例えば、光で粒子を綺麗に配列する技術や、光の力を用いたレーザー加工技術などに応用可能
概要
例えば、遊園地にあるコーヒーカップの乗り物は、ステージの上でカップが公転すると共に、それぞれのカップ自体も自転しますが、自転が公転の速度に影響を与えるようなことはありません。一方で、光で小さな粒子を操作する際は、そのような不思議な現象が生じえます。光で物体を動かせることは既に常識となりつつありますが、本研究では光渦と呼ばれる渦を巻く光線の下で公転運動するナノ粒子集団の速度を、光のスピンによって加速・変調できる新原理を世界に先駆けて理論的に解明しました。この成果は、物質の光操作技術をより高度にするものであり、例えば光で粒子を綺麗に配列する技術や、光の力を利用したレーザー加工技術などの発展に貢献するものと期待されます。
本研究成果は、日本時間2019年7月5日(金)14時に米国化学会(ACS)の科学論文雑誌「Nano Letters」で公開されました。
論文タイトル「Interparticle-Interaction-Mediated Anomalous Acceleration of Nanoparticles under Light-field with Coupled Orbital and Spin Angular Momentum」(軌道・スピン角運動量が結合した光場の下で粒子間相互作用が介するナノ粒子の異常な加速)
- Nano Letters Webサイト
- プレスリリース全文(1.8MB)
研究サポートについて
本研究は、文部科学省 科学研究費新学術研究領域研究「光圧によるナノ物質操作と秩序の創生」(JP16H06507(代表: 石原 一))、 JST未来社会創造事業 探索加速型 「共通基盤」領域(JPMJMI18GA(代表: 飯田 琢也))、科研費基盤研究(A)(JP17H00856(代表 飯田 琢也)、JP18H03884(代表 尾松 孝茂))、科研費基盤研究(B)(JP18H03522(代表 床波 志保)))、大阪府立大学キープロジェクト(代表 飯田 琢也)、その他の支援を受けて完成しました。
お問い合わせ
大阪府立大学 大学院理学系研究科/LAC-SYS研究所
特認助教 田村 守
Eメール Mail: m-tamura[at]p.s.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。准教授・所長 飯田 琢也
Eメール t-iida[at]p.s.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。