公立大学法人大阪府立大学

「風船ガムセンサ」で1000兆分の1グラムのタンパク質を数分で検出―光の圧力と熱が産み出すミクロな風船ガムの収縮を利用―

更新日:2019年1月30日

大阪府立大学大学院 理学系研究科・LAC-SYS研究所のチーム(植田 眞由 氏(平成29年度博士前期課程修了)、飯田 琢也 所長、床波 志保 副所長ら)は、人間の血管と同程度の太さの流路の中で光の圧力によって集積化した金属ナノ粒子(解説)の集合体からの発熱効果でバブルを発生し、その収縮過程を利用してバブル表面に吸着したタンパク質とナノ粒子の集合体のサイズから1000兆分の1グラム(=1fg(フェムトグラム))レベルのタンパク質を数分で検出できる「バブルガムセンサ」の新原理を見出しました。

本成果は2018年ノーベル物理学賞の対象となった光ピンセットの発展技術に関するもので、指先などから採取した微量の血液などの体液から、成人病やアレルギーの原因となるタンパク質を検出できるバイオ分析技術の基礎となるものであり、食品業界や医療分野における革新的な検査手法を提供し得る成果です。

APL PhotonicsのFeatured Article、米国物理学協会(AIP)の注目論文を紹介する Scilightにも選ばれました。

本研究のポイント

「光の圧力」で集めたナノ粒子集合体の「発熱」でバブルを発生し、その表面に集積したタンパク質をバブルの収縮過程を利用して検出の図

「光の圧力」で集めたナノ粒子集合体の「発熱」でバブルを発生し、その表面に集積したタンパク質をバブルの収縮過程を利用して検出

  • 光誘起バブル表面に集積化した金属ナノ粒子集合体とタンパク質をバブルの収縮過程を利用して寄せ集めることで、従来法で数時間かかるところを、3分~10分程度で1000億分の1グラム~1000兆分の1グラムのタンパク質の定量検出に成功。
  • (1)マイクロ流体チップ中の狭い空間でレーザー光と熱源となる金属ナノ粒子集合体の相互作用確率を向上、(2)光の圧力で天井に打ち上げて集めることでバブルを効率良く発生、(3)同時に発生した光誘起対流とポンプで駆動された圧力によりタンパク質を効率良くバブル表面に集積化。
  • タンパク質の添加量が多い場合は多数のバブルが発生し、広帯域の光を吸収する金属ナノ粒子固定化ビーズの集合体を短時間で多数形成でき、新規ナノ複合材料の開発にも適用可能。

研究論文

本論分は「APL Photonics(米国物理学協会(AIP)の科学論文雑誌)」のInvited Article(招待論文)で、2019 年 1月30日0時30分(日本時間)に公開されました。

論文タイトル「 Microflow-mediated optical assembly of nanoparticles with femtogram protein via shrinkage of light-induced bubbles(光誘起バブルの収縮を介したフェムトグラム・タンパク質によるナノ粒子のマイクロフロー媒介光集積)」

用語解説

解説 金属ナノ粒子

 典型的には金属から成る100ナノメートル(nm:ナノメートルは100万分の1ミリメートル)以下のサイズの粒子を指します。金属はその内部を電子が自由に走り回ることができるため高い導電性を示すことは良く知られています。一方で、このような自由電子がナノサイズ物質の表面に強く束縛されます。このような表面に束縛された自由電子の状態を「局在表面プラズモン」と呼びます。局在表面プラズモンの共鳴波長は金属ナノ粒子のサイズや形、粒子間の相互作用に応じて敏感に変化します。このため、例えば、500~600ナノメートルに共鳴波長を有する金ナノ粒子の溶液は、透過光で見るとサイズに応じて共鳴波長の補色(緑色~赤橙色)である赤色~青色に変化します。また、金属ナノ粒子を高密度集積することで粒子間の相互作用により吸収波長が広帯域化することも知られています。

研究助成等

本研究は、日本学術振興会 科研費基盤研究(A)「多種生体サンプルを標的としたオンデマンド光誘導加速システムの創成」(17H00856)、科研費基盤研究(B)(No.15H03010)、大阪府立大学キープロジェクト、キヤノン財団、特別研究員奨励費(No.18J13307)、新学術領域(提案型)「光圧によるナノ物質操作と秩序の創生」(No.16H06507)、その他の支援を受けて完成しました。

お問合せ先

大阪府立大学 研究推進機構 LAC-SYS研究所

Tel 072-254-8132

所長 飯田 琢也

Eメール t-iida[at]p.s.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。

副所長 床波 志保

Eメール tokonami[at]chem.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。