大阪府立大学

金ナノ粒子とセルロースの複合化による新しい素材開発に成功!―破れない金箔!―

更新日:2019年1月25日

大阪府立大学 大学院 工学研究科 博士前期課程 2年 富山 智大、同1年 齊藤 真希と、椎木 弘准教授らの研究グループは、金ナノ粒子(解説1)と植物由来セルロースナノファイバ(解説2)の自発結合を利用して、金の5倍の強度を持つ金箔の開発に成功しました。
この金箔は、有害物質を用いることなく、金ナノ粒子とセルロースナノファイバの分散液を混ぜてろ過、乾燥するだけで簡単に作製することができ、金含有量13vol.%で金属的な導電性を示しました。また、水で湿らせた2枚の金箔を貼り合わせるだけで接合や修復が可能です。
本開発はフレキシブル配線や電極として、実装や電池、センサの形成において有用な材料となり、電子ペーパー、電子スキン、およびスマートテキスタイルなど次世代デバイスへの展開が期待できます。

本研究のポイント

図 本研究で開発した金箔

  1. 金ナノ粒子とセルロースの混合分散液をろ過して乾燥するだけで誰でも簡単に作製できます。水素結合を利用するため特別な反応は不要、様々な形状に加工ができます。
  2. 金箔中の金含有量を80%以上低減化。
  3. 軽量、柔軟でありながら金の5倍の引張強度を示す。
  4. 湿らせた金箔を貼り合わせるだけで接合、修復可能。
  5. マイクロメートルサイズの基材に選択的に形成可能。

研究概要

金は環境安定性、導電性や電磁波の反射性が高いなど多くの優れた特徴をもつことから、古くから貨幣や装飾品として、近年では、めっきや薄膜として高密度実装や光学用途に広く用いられています。希少資源である金は延性や展性にも富んでおり、金1 グラムから1 平方メートル以上の広い面積の箔(100ナノメートルの厚さ)が得られます。このような金箔の製造は伝統工芸技術として伝承され、工芸品や美術品に用いられてきました。

金の使用量低減化の観点から金箔技術は有用ですが、その製造には熟練技術を要し、微量に含まれる銀や銅の溶出に伴う劣化や剥落が生じるなど、加工性や機械強度、化学安定性が低いといった問題があります。金箔を工業的に利用するには、適度な機械的強度と柔軟性を同時に達成することによってそれらの脆弱性を低減化することが必要です。

私たちは、セルロースナノファイバ(CNF)と金ナノ粒子(AuNP)の自発結合を利用した簡単な金箔技術を開発しました。植物や微生物から取得されるCNFは軽量かつ高い機械強度を示すことから、近年、自動車の部品や化粧品、塗料、食品など様々な分野で使用されています。AuNPはバルク金属とは異なる性質を有しますが、水素結合を通じてCNFにAuNPを配列して形成した金箔は、金含有量(13vol.%)で金属的な導電性を発現することを見出しました。さらに、この金箔は軽量、柔軟でありながら金の5倍の引張強度を示しました。

本成果はWiley-VCH社「ChemNanoMat」オンライン版で 2019年1月16日(日本時間)に公開されました。なお、「ChemistryViews.orgのChemViews Magazine」で注目すべき論文としてハイライトされました。

論文タイトル「Smart Golden Leaves Fabricated by Integrating Au Nanoparticles and Cellulose Nanofibers」

用語解説

解説1 金ナノ粒子(AuNP)

金コロイドとも呼ばれ、1ナノメートルから100ナノメートル程度の粒径をもつ金の粒子のこと。分散状態では特徴的な光学特性に基づく赤色を呈することから、古くからステンドグラスや切子などの赤として、近年では、インフルエンザや妊娠検査用テストストリップの標識として利用されている。

解説2 セルロースナノファイバ(CNF)

植物や微生物などのバイオマスから得られ、直径数ナノメートルから100ナノメートルの天然高分子系セルロースの繊維状構造体である。軽量でありながら高強度、熱変形が小さいなど優れた特性を有する。

研究助成等

本研究は、JSPS科学研究費補助金(16H04137)の助成を受けて行いました。

お問い合わせ

大阪府立大学 大学院 工学研究科

准教授 椎木 弘

Tel 072-254-9875 Eメール shii[at]chem.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。