レーザーで有機溶媒中の分子を多結晶化する新手法を開発―細胞程度の大きさの偏光フィルターを光で創る―
更新日:2018年7月23日
大阪府立大学(学長 辻 洋)理学系研究科/LAC-SYS研究所のチーム(山本 靖之 大学院生、飯田 琢也 所長、床波 志保 副所長ら)は、京都大学(総長 山極 壽一)理学研究科化学専攻のチーム(依光 英樹 教授ら)との共同研究により、有機溶媒中での局所的なレーザー加熱を利用した有機分子の多結晶化法(光誘導型溶媒熱集合法)を世界に先駆けて開拓し、顕著な偏光異方性を持つ数十ミクロン程度のマクロなサイズ(細胞と同程度の大きさ)の花びら状の有機多結晶の大量生成に成功しました。様々な有機分子の集合構造および多結晶の生産につながる成果であり、ナノエレクトロニクス、ナノフォトニクス、生体模倣型光技術など光・量子技術の多種多様な分野での次世代の材料開発の革新的手段を提供し得る成果と言えます。
本成果は「Scientific Reports」オンライン版で2018年7月23日に公開されました。
論文タイトル「Macroscopically Anisotropic Structures Produced by Light-induced Solvothermal Assembly of Porphyrin Dimers(ポルフィリンダイマーの光誘導型溶媒熱集合により生成されたマクロに異方的な構造体)」
本研究のポイント
- 有機溶媒を光発熱効果で沸騰させて有機分子の集合化を促進する「光誘導型溶媒熱集合法」を開発し、数秒~数分のレーザー照射でポルフィリン系分子を放射状に集積化して顕著な偏光依存性を示すマクロな多結晶生成に成功しました。
- 金ナノ薄膜へのレーザー照射による有機溶媒の急速沸騰で発生した気泡を光誘起対流のストッパーとし、1nm(nmは100万分の1mm)程度のサイズの分子を光誘起対流で輸送・集積して細胞と同程度の数十μm(μmは1000分の1mm)に迫る大きさの多結晶を多数生成できることが分かりました。
- 開発した手法は、様々な有機分子の大規模配列や多結晶化に利用でき、次世代の光学素子や電子素子の材料となる異方性を有する多様な材料開発に貢献するものです。
研究助成資金等
本研究は、科学技術振興機構(JST) 先導的物質変換領域(ACT-C)(No.JPMJCR12ZE)、日本学術振興会 科研費基盤研究(A)(17H00856)、科研費基盤研究(B)(No.15H03010)、大阪府立大学キープロジェクト、キヤノン財団、特別研究員奨励費(No.18J13307)、新学術領域(提案型)「光圧によるナノ物質操作と秩序の創生」(No.16H06507)、新学術領域「原子層科学」(No.25107002)、その他の支援を受けて完成しました。
お問合せ先
大阪府立大学 理学系研究科 物理科学専攻 准教授、研究推進機構 LAC-SYS研究所 所長 飯田 琢也
Tel 072-254-8132 Eメール t-iida[at]p.s.osakafu-u.ac.jp” contact office [at]の部分を@と差し替えてください。京都大学 理学研究科 化学専攻 教授 依光 英樹
Eメール yori[at]kuchem.kyoto-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。