大阪府立大学

ニホンライチョウに寄生する病原性原虫の新種を特定―生息数増加に貢献、新種を「ライチョイ」と命名―

更新日:2018年7月20日

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 獣医学専攻の松林 誠 准教授(専門 原虫学)、中部大学 創発学術院 牛田 一成 教授・土田 さやか 特定講師(専門 腸内細菌学)、日本大学 生物資源科学部 村田 浩一 教授(専門 野生動物医学)らの研究グループは、国の特別天然記念物で絶滅危惧種とされる野生ニホンライチョウを調査し、繁殖・育雛期にかけて寄生虫が蔓延し、これが生息数減少のひとつの要因となっている可能性を明らかにしました。また、ニホンライチョウに寄生する原虫は新種であることが分かり、「Eimeria raichoi」と命名しました。

1980年には約3,000羽いた固体数が現在2,000羽以下に減少しており、特に孵化後の雛の成育率の低さが課題でした。寄生虫感染への対策が保全には重要であると考えています。

また今後のニホンライチョウの保全計画、生息数の増加への寄与が期待されます。

本成果は「International Journal for Parasitology」オンライン版に公開されました。

論文タイトル「Surveillance of Eimeria species in wild Japanese rock ptarmigans, Lagopus muta japonica, and insight into parasitic seasonal life cycle at timberline regions of the Japanese Alps. 」

論文タイトル「Molecular identification of two Eimeria species, E. uekii and E. raichoi as type B, in wild Japanese rock ptarmigans, Lagopus muta japonica .」

本研究のポイント

研究の概要

国の特別天然記念物で絶滅危惧種とされる野生ニホンライチョウの保全を目指し、生息数減少の原因を特定するため野外調査を実施しました。

新たに分かったことや成果

ニホンライチョウには消化管に寄生する2種の原虫が広い生息域で蔓延しており、感染率は繁殖と育雛にとって重要な夏場に向け、より重度に感染していることが明らかになりました。また、遺伝子解析結果により1種は新種であることが確認され、「Eimeria raichoi」と命名しました。これらの原虫はライチョウとともに寒冷地で長期間生存できるように環境適応している可能性があります。

今後、貢献できること

本研究成果により、原虫対策を積極的に実施することで、今後、ライチョウの生息数増加に向けて大きく貢献します。

松林 誠 准教授のコメント

20年近く家畜の原虫学に携わってきました。それがライチョウ保全に少しでも役立てれば、研究者として大変嬉しいです。

SDGs達成への貢献

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究はSDGs17のうち、「15:陸の豊かさも守ろう」に貢献しています。

科研費事業などの研究費の拠出元

ニホンライチョウ保護増殖に資する腸内細菌の研究(京都府立大学 牛田 一成)
平成28年度 環境研究総合推進費実施課題(4-1604)

お問い合わせ

大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科 獣医学専攻

准教授 松林 誠

Tel 072-463-5513 Eメール matsubayashi[at]vet.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。