絶滅要因は蟻にアリ?!アリの巣に寄生するチョウの絶滅要因が明らかに
更新日:2016年12月7日
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科の上田昇平助教と茨城大学農学部の坂本洋典研究員らは、 信州大学、九州大学との共同研究で、絶滅危惧種の日本産ゴマシジミ属のシジミチョウ(以下、ゴマシジミ属)がシワクシケアリ種内の特定の遺伝的系統のみを寄主とすることを明らかにし、このチョウの絶滅要因が寄主アリの激減によって起こる可能性を示しました。
本研究のポイント
- これまでのDNA解析の研究の結果、日本産ゴマシジミ属(ゴマシジミチョウとオオゴマシジミチョウ)の寄主アリ(シワクシケアリ)が、形態的な差異が見いだせない4つの遺伝的系統に分化することが分かっていた
⇒本研究ではゴマシジミ属の幼虫が「どのアリ系統に寄生するか」を調査した - その結果、ゴマシジミとオオゴマシジミの幼虫はそれぞれ異なるひとつのシワクシケアリ系統のみに寄生しており、絶滅が最も危惧されるゴマシジミ属の発生地では特定の遺伝的系統の寄主アリが激減し、別の系統のアリが生息していること(ゴマシジミ属と寄生アリの相関性)が判明した
⇒絶滅危惧種のゴマシジミ属の保全のためには、寄主アリ系統に好適な環境の保全・復元に取り組むことが重要であることが明らかになった
ゴマシジミ属のシジミチョウについて
アジア・ヨーロッパに広く分布するゴマシジミ属は、若齢幼虫の間には特定の植物を食べるのですが、終齢幼虫になると寄主であるクシケアリ属の働きアリを化学擬態で騙し、巣内に侵入します。そして、寄主アリの巣内に侵入した終齢幼虫は肉食性に変化し、寄主アリの幼虫や蛹を捕食します。ゴマシジミ属の寄主植物・寄主アリへの特異性は極めて高く、どちらか一方の寄主が欠けただけで生育が不可能となります。このような特殊な寄主依存性を持つため、ゴマシジミ属は環境の変化に弱く、現在、世界各地で絶滅の危機に瀕しています。
なお、本研究成果は2016年11月3日に論文誌「Scientific Reports」に公開されました。
論文タイトル:Host-ant specificity of endangered large blue butterflies (Phengaris spp., Lepidoptera: Lycaenidae) in Japan

シワクシケアリ幼虫を捕食するオオゴマシジミ幼虫(撮影:九州大学熱帯農学研究センター 小松貴)
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