現代システム科学域とは
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地球の資源が有限で、いずれ食糧やエネルギーが不足するだろうということは、40年以上も前の1972年にローマクラブが発表した「成長の限界(Limits to Growth)」というレポートの中にすでに示されています。このとき、ワールド1というコンピューター・シミュレーション・モデルを用いた将来予測が行われ、1人当たりの食糧や1人当たりの工業生産は2020年頃に激減するという結果が出され、全世界に衝撃が走りました。この「成長の限界」の発表以降、国連を中心として、悲劇的な破滅を避けるための方策が検討されることとなりました。そのような中、国際自然保護連合(IUCN)、国連環境計画(UNEP)などにより1980年に発表された「世界保全戦略」において、持続可能な開発(Sustainable Development)という言葉が初めて使われました。その後、当時ノルウェー首相であったグロ・ハーレム・ブルントラント氏を委員長として1982年にスタートした「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」において、「持続可能な開発」の概念が固められ、1987年に発表された最終報告書「地球の未来を守るために(Our Common Future)」の中で、次のように定義付けられました。「持続可能な開発とは、将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」   “Sustainable development is development that meets the needs of the present without    compromising the ability of future generations to meet their own needs.”ここでは、世代間の公平性(equity between generations)だけでなく、各世代における地域間の公平性(equity within each generation)が最も重要な理念として位置付けられており、富の集中と貧困の問題、地域紛争による難民の問題なども大きな課題として取り上げられています。このように、持続可能性を意味するサステイナビリティ(Sustainability)という言葉には、単に各国や地域において、それぞれの経済状況や生活環境を維持させるだけではなく、世界中の飢えや貧困をなくし、万人が健康で文化的な生活を営むことができなければならないという強い意志が込められているのです。

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