現代システム科学域とは
8/12

ところで、もし経済格差や紛争がなくなり、水や食糧、エネルギーなどがすべての人に行きわたるような社会が実現されたとして、いったい地球にはどれくらいの人が生きていけるのでしょうか?地球の資源は限られています。地球の資源と人類の消費とのバランスをはかるものさしの一つに、エコロジカルフットプリントがあります。エコロジカルフットプリントは人間活動によってどれだけ生産力のある土地が使われたことになるかを計算する指標です。実際の地球上の生産力のある土地の面積と比較して、人類の持続可能性をはかってみようというわけです。下の図は人間活動によるエコロジカルフットプリントを地球の環境容量で割った値、つまり地球何個分で人類が活動していることになるのかという値になります。これを見ると、1960年頃は、人間活動による資源の消費は地球3/4個分くらいで「持続可能」な状態でしたが、1970年代に地球1個分を超え、2008年時点で地球1.5個分となっていることがわかります。つまり、すでに人類は地球全体として「持続不可能」な消費活動を行ってしまっていることになります。図には将来の予測も示されていますが、その答えは大きく2つに分かれています。実線で示されているのは、今の消費スタイルがそのまま続くというシナリオで予測した値、点線で示されているのは、人口抑制や二酸化炭素排出削減などあらゆる省資源化対策が成功するというシナリオで予測した値です。実線のシナリオでは、2050年には地球3個分に近づいていて、水や食糧、エネルギーが不足することは明らかです。一方点線のシナリオでは、徐々に値は下がり、2050年には地球1個分、すなわち「持続可能」な社会に戻すことができるという結果となっています。私たちは、どちらのシナリオを選ぶのか、という問いに今直面しているのです。

元のページ 

page 8

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です