現代システム科学域とは
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生物間の「食う-食われる」の関係を表す言葉に、「食物連鎖(しょくもつれんさ)」という言葉があります。例えば、海藻をウニが食べ、それをラッコが食べ、さらにラッコはサメに食べられる、という関係です。しかし実際には、このような単純な関係ではなく、海藻はウニ以外にも貝やカニなどさまざまな生物に食べられ、ラッコもウニだけではなく貝やカニなどさまざまな生物を食べます。このように、多くの生物が複雑な「食う-食われる」の関係を築いているのです。このような関係のことを「食物網(しょくもつもう)」といいます。ここで示した食物網の例は、アメリカのカリフォルニア沿岸に実際に存在しているものですが、実は1800年代に人間が毛皮欲しさにラッコを大量に捕獲したため、ウニが大繁殖して海藻がほぼ食い尽くされ、それを食べるアワビも絶滅寸前となりました。その後ラッコの捕獲が禁止され、なんとか生態系も回復しましたが、ラッコの捕獲が生態系全体を崩壊させるということは予想もされないことでした。つまり、単純な行為であっても、それが環境にどのような影響を与えるのかを予測するためには、それに直接関係する要素だけでなく、それらをとりまく多くの要素と、要素間の複雑な関係を全体的に理解しておくことが必要なのです。このように、ある物事を一つの側面から単純に捉えるのではなく、複数の要素の相互作用として理解し、変化の予測や新たな仕組みの構築を可能にする能力のことを「システム的思考力」といいます。この能力が持続可能な社会の実現に不可欠なのです。

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