現代システム科学域とは
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私たちは、サステイナブルな社会を作り上げていくことのできるような人を、大学で育てたいと考えています。では、それはどのような人のことを言うのでしょうか。それは、たとえば海の中に住んでいる生物たちの「食う―食われる」関係を、という大きな「食物網」として俯瞰的に捉えることのできるような視野を持った人のことです。そういう俯瞰的な眼を持っていれば、グローバルな経済の仕組みの全体を眺め取ったり、商品の生産と流通のシステムの全体を把握したり、人間と自然の複雑な関係をいろんな側面から理解することができます。これを「システム的思考力」と呼びます。また、ものごとを考えるときに、理系・文系を問わず、さまざまな学問領域の知識を総動員して立体的に問題をつかみ取っていくことが求められます。いろんな領域を横断して考えられるという意味で、これを「領域横断的応用力」と呼ぶことができるでしょう。さらには、世界中の飢えや貧困をなくし、経済格差を縮小し、すべての人々の尊厳が守られる地球社会を作っていきたいという高い倫理観と使命感を持ってサステイナブルな社会の建設に向かえるような人でなくてはなりません。どんな困難な問題に直面してもその解決策を導き出し、同じ志を持つ仲間とともに実際にそれをやり遂げられる強い意志が必要となります。このような力は「人間力」と言われます。システム的思考力や領域横断的応用力を養うには、その意味やベースとなるさまざまな知識をバランスよく学ぶ必要があります。また、それらに関連する多くの情報を効率よく取得し、整理して理解する、あるいは発信する技能を身に付けることも必要でしょう。ところが、高い倫理観や使命感、困難な問題に挑戦し、解決していく能力は、なかなか教えられても簡単に備わるものではありません。さまざまな場面に遭遇し、仲間と協働で乗り越えていくという経験を繰り返し積むような学習、つまり実践型カリキュラムが必要となるのです。現代システム科学域では、このような人間力を養うための学びを大切にし、サステイナブルな社会を創り上げるために必要な人材を一人でも多く育てたいと願っています。

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