大学広報誌OPU Vol.02「紡」
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人のネットワークの大切さを実感する毎日です。3つの大学が統合して大きくなった大阪府立大学の舵取りは、「人と人との絆に支えられる毎日」と語る南学長。府大OBでもある南学長が、学生時代とこれまでの道のりを語ります。学長 南 努Tsutomu Minami私が工学部応用化学科に入学したのは1960年。安保闘争のまっただ中で学内は揺れていました。日米安全保障条約が本当に悪いのか良いのか…、私には判断がつかなかったので、デモには参加しませんでした。勉強に専心するようになったのは、実験を始めた頃からです。3年生の終わりには研究室選びが行われたのですが、当時の日本は高度経済成長の頃で、石油化学や高分子化学の研究室に人気がありました。私もそこを希望しましたが、人数が多くてジャンケンをしたら負けたんです。仕方なく無機化学に進みました。ジャンケンに負けたことが、結果的に私の将来の専門領域や職業を決めることになりました。大学院では自分の専門のほかに、電気工学科の半導体の研究室に積極的に出入りしました。無機化学に加えて、当時はまだ走りだった半導体に関する知識を若い段階で身につけることができたことは、その後の研究に非常にプラスになりました。人間、何が幸いするか分かりません。絶対にこれでないといけないと決めてかかるのは良くない。与えられた場、与えられたポジションでベストをつくせば、明日は必ず開けると思います。助教授の時、アメリカの有名大学に留学しました。それまでは論文や専門誌を見ても、英語の論文の方が質が高いのではないかという一種のコンプレックスが私の中にありました。ところがアメリカに行って1週間もしないうちに、世界が180度転換しました。何だ、違いは英語が得意か不得意かだけで、中身は絶対に負けていない。学生も私の研究室にいる府大の学生の方が優秀だと思いました。もし、差があるとしたらそれは気持ちの持ち方、志だと。府大の持っているポテンシャルは非常に高いものがあります。教育環境、キャンパス、研究内容、まったく申し分ない。高い志や夢があれば、必ず開花します。若い人たちは夢を大きく持ってほしい。そして修学の志高く学べば、知らず知らずのうちに友情を育み、生涯の宝となる人と人との絆を築けます。人のネットワークの素晴らしさを実感するのは、多分いくらか年をとってからでしょう。大学時代の友人たちとは、今も何かにつけていい交流を続けています。研究もビジネスも、一人でできる時代ではありません。人のネットワークをうまくプラスにもっていくことができれば、活性化します。私自身、大きくなった大阪府立大学という組織を、人を活かし、人に助けられながら、楽しく活気のある集団にしなければなりません。責任重大だと思っています。留学先のアメリカで府大のポテンシャルの高さを実感大切なのは、与えられた場でベストをつくすこと40

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