大学広報誌OPU Vol.02「紡」
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大阪府立大学・羽曳野キャンパスの療育学習支援センター1階に「闘病記文庫」がある。ここには現在約800冊の闘病記が集められ、病気別に分類され、希望者へ貸し出されている。「自分や家族が病気になったら誰もが戸惑います。仕事は、日常生活は、精神的負担は、残りの人生は…。先輩患者が書いた闘病記は医師の説明では得られない情報をたくさん与えてくれます」和田講師は看護師時代、「病気になった人はみんな書きたい、読みたい、そして情報を必要としている」と強く感じたという。それが修士論文へとつながり、現在の闘病記文庫の活動へと続いてきた。闘病記文庫を利用する人は、患者さんや家族のほか看護師、保健師なども多い。大阪府立大学では、「こんな本を探している」という利用者の相談にはベテランの看護師があたり、「利用者の人が探しやすい病気別分類」は、はびきの図書センターの小池司書が熱心に取り組んでいる。和田講師のもとでは闘病記のデータベース化も着々と進行中だ。また、和田講師は看護教育の一環として定期的に看護学生を集めて「闘病記を読もう会」を開催。本をツールに患者さんのことを話し合う機会を持っている。このほか厚生年金病院では、闘病記をワゴンに乗せて病室を回り、本を貸し出すという試みもスタート。将来的にはスタッフが出張して、さまざまな病院で「読もう会」を開くことも検討中だ。「これまでの医療は患者さんの語りにあまり注目してきませんでした。医療従事者も患者がどう癒されるかを学び、後輩患者も自分の生き方を考えることのできる闘病記文庫を、社会にもっと発信していきたいですね」患者の語りを医療現場に生かす取り組みは、ナラティブ・ベースド・メディスン(NBM)といわれ、欧米では注目が集まっている。看護学部和田恵美子講師(左)自ら図書展をまわって集めた闘病記も多数。そのスタンスは常に「病気になられた方が専門家で私はコーディネーターです」。小池利栄子司書(右)闘病記文庫先ゆく先輩たちの病気体験を共有しよう●お問い合わせ先担当:和田恵美子講師Tel:072-950-2111(内線2540)Fax:072-950-2124E-mail:emiko@nursing.osakafu-u.ac.jp地域の人々の健康づくりとしあわせのために看護学部と総合リハビリテーション学部が中心となって、地域の人々の「からだ」や「こころ」の健康に関する相談や支援、すこやかな日常生活を支える活動を行っています。シリーズ「地域と大学」1第回33

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