大学広報誌OPU Vol.02「紡」
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で病気が良くなることもある」、そんな話題のルーツとして池田准教授はノーマン・カズンズ氏の事例をあげる。アメリカのサタディ・レビュウ誌の元編集長で、被爆した日本人女性をアメリカに招いて治療を受けさせた「原爆乙女の父」としても有名なノーマン・カズンズ氏は、1964年に膠原病を患い、発熱と激しい痛みに苦しんだ。プラスの感情を持てば体にいいと考えたカズンズ氏は、連日ユーモア全集を読み、喜劇映画やコメディ番組を見て、大笑いする治療を実行した。ポジティブな感情を持ち続けることにより病気はどんどん改善され、この経験をきっかけにやがてはUCLAの教授に転身し、精神免疫学の研究に取り組んだ。10年後、今度は心筋梗塞に見まわれたが、彼は再び笑うことを中心としたプラス思考を持ち続け、病気を克服し、2度目の奇跡を起こしたといわれている。「学者、医師、看護師、弁護士などさまざまな職種の人が関わっている『世界ユーモア学会』というのがあり、幅広くユーモアについて研究されています。ここではノーマン・カズンズ氏の事例だけではなく、笑いつきあって暮らしていかなければなりません。悪くなったり良くなったりをくり返したり、少しずつ悪くなったりと、病気のありようによって違いますが、その過程で挫折したり、あきらめたり、希望をなくす人もたくさんいます」その反面、経過が長いにも関わらず、うまく病気とつきあっていける人もいる。この違いはどこから生まれるのだろうか。「たとえば慢性病のひとつである糖尿病の患者さまの例をあげますと、毎日楽しみを持っている人、笑うことの多い人、ユーモア志向度の高い人は血糖コントロールが明らかにいいという調査結果が出ています」「笑いが健康にいい、笑うことと健康の効用について多くの研究結果が出ています」池田准教授が本格的に「笑い」に関わりだしてから約10年。この間には、世界ユーモア学会で研究発表も行っている。看護学部看護学研究科看護学部看護学研究科池田 由紀准教授Yuki IkedaProfile郷里の三重県には日本の神事「笑い講」が伝わっている。三重県立看護大学講師を経て2003年より大阪府立看護大学療養支援看護学助教授、統合により2005年より大阪府立大学助教授。研究分野は、慢性看護学、慢性呼吸器疾患、患者教育。『日本笑い学会』の理事池田准教授の専門は、慢性呼吸器疾患をもった人の療養生活を支援するための看護プログラムの構築である。「慢性病をもった人は、一生涯その病気と慢性病をもった人たちやストレスフルな看護師たちに「笑い+健康」をパックで届ける!『笑う門には福来る』『笑いは人生の妙薬』という諺には、何となく不思議な説得力がある。池田准教授は「笑いと健康」の関係を科学的に分析し、慢性病をもった人の療養生活の支援活動に積極的に取り組んでいる。それは、「お笑いの出前と健康ばなし」をパックにして、プロの芸人さんとともに病院や施設に出向き、普段笑うことの少ない人々に思い切り笑っていただき、健康に近づいてもらおうという試みだ。「『笑いは百薬の長』です。みなさんも、もっと笑ってみませんか?」2度の奇跡を自ら起こしたノーマン・カズンズ氏糖尿病患者にもみられる笑いの効用「笑い+健康パック」では、ワッハ上方の協力のもとに漫才師、落語家、マジシャンたちが派遣される。大阪市の住友病院で行われた公演では、池田准教授の健康ばなしに続いて、漫談・西川まさとさん、落語家・林家染助さんが登場。軽妙な話術に観客たちの笑いが炸裂。25

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