平成30年度版(平成29年度報告)環境報告書
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第2章 環境研究・環境教育 長年、中百舌鳥キャンパスで「緑」をテーマに教育研究に携わり、平成29年3月末に定年退職を迎えられた生命環境科学研究科長の増田昇先生に研究生活や大学、学生に対する思いを語って頂きました。 Q 増田先生の長年の研究生活の中で、印象に残っている研究テーマや成果は何でしょうか。 広域緑地計画、緑の基本計画等に関する研究が私のテーマでした。その中で“グリーンインフラ”の構築を進めてきたことが印象に残っています。また、その構築を支える仕組みとして、市民参加型を提案し、活動を誘発させることも研究テーマでした。 その例の一つとして、箕面市の公益信託「みのお山麓保全ファンド」の設立に関わりました。山林所有者や市民による箕面の緑豊かな山麓を、守り・育て・活かす自発的な活動を、助成を中心に資金面から支える仕組みで、日本では初めての試みです。 住んでいる、あるいは働いている環境に誇りと愛着を持ち、個性ある環境の魅力をどのように創り、維持するかということも研究しました。 Q それらの研究の中で、苦労された点があればお教えください。 グリーンインフラの研究を進める中では、関連する具体的なデータの蓄積が遅れているということがありました。研究を展開する上で客観的なデータをどのよ うに取得するかという点は常に考えていました。 また、住民等の参画をどのように持続していくか、住民の合意形成の進め方も難しい点でした。活動を推進するために資金調達、すなわち活動を支える経営的成立性の検討は重要ですが、これも難しいところです。 個性ある景観を創出していくための研究成果をどのように社会に実装していくか、研究で得た成果を社会に還元するかということも苦労した点です。 Q 大学教員として学生の教育にも尽力されたものと思いますが、教員としてのポリシーをお聞かせください。 教育内容は、緑を中心とした風景や環境を創っていくことが中心でしたので、学生と一緒に進めることが基本でした。研究テーマを教員側から学生に与えるのではなく、学生自身がテーマを発想し、学生と教員が議論しながら研究を進める、学生のやりたいことを展開するということを実行しました。ゼロベースからの展開です。 “自然が好き”であることと同時に“人間が好き”という社会人を育てたいと考えていました。理念先行型ではなく、研究成果を社会にどのように実装していくか、日常生活の中で体験的学習を伴いながら、現場、体験を重要視することを信条として教育を進めていました。 Q 増田先生は、本学の卒業生でもあり、本学で教員でしたが、本学の学生に対して、どのような印象をお持ちでしょうか。 本学の学生はおおらかさを持っていると思います。大きく成長し、大化けする伸び代を持っていると言っても良いでしょう。ゆとりを持ちながら入学し、大きく伸びていくことに喜びを感じています。目前の利害ではなく、全体を見ながら、長期的な視点も持ち、成長していく学生の多いことが好きなところです。 増田 昇教授(生命環境科学研究科長) キャンパスに愛着と誇りを OPU University Social Responsibility Report18

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