平成28年度版(平成27年度報告)環境報告書
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大阪府立大学環境報告書 31 伝導度:電気抵抗値の逆数で、値が大きいほど水が電気を通しやすい。すなわち水中のイオン濃度が大きいことを表す。おおよその栄養塩濃度を推定できる。 透視度:水がどの程度透き通っているかを表す。透視度計と呼ばれる筒に試料水を入れ、底の二重十字線がはっきりと視認できる最大の水柱高さを測定値とするもの。 伝導度に着目すると、府大池流入水に比較して流出水ではその値が低下していることがわかります。これは水中のイオン濃度、すなわち栄養塩類の量が減少したことを意味します。同時期に透視度が低下していることと、おおよその水の色から、これは植物プランクトンの増殖によるものと考えられます。植物プランクトンが増殖しているため、光合成により水中の栄養塩類が消費されるとともに二酸化炭素が吸収され、pHが高い値を示しています。 以上のことから、府大池は上流から流入した栄養塩類濃度の高い水を浄化する天然の浄化槽と言うことができます。池の濁った水は優れた浄化能力の代償なのかも知れません。 "赤い府大池"の原因、アゾラの影響 前項で流入水に比べ流出水でpHが上昇していると述べましたが、7~11月ではそのような傾向がみられません。 このような結果となった主な要因としては、近年、夏から秋にかけて府大池を赤く染める雑種アカウキクサ(Azolla cristata x sp.; 以下、アゾラ)の被覆により、開水面が失われつつあることが挙げられています。アゾラが水面を覆うことで水中の植物プランクトンが太陽光を得られず、光合成による二酸化炭素の吸収が抑えられたことで、冬や春よりもpHが低下したと考えられます。 アゾラの被覆により光合成が抑えられると、水中の生産者である植物プランクトンの増殖が妨げられ、栄養塩類の吸収が抑えられます。さらに、窒素固定生物であるアゾラは夏に空気中の窒素から得た栄養で増殖しますが、それらが冬に枯れて沈下しヘドロ化した際に栄養塩類濃度をより高めることが懸念されています。また、アゾラが水面を覆い尽くすことで府大池の景観が悪化することはよく知られています。 しかし、一方で植物プランクトンの過剰増殖による行き過ぎたpHの上昇を食い止める役割も果たすため、一概に悪い生物であると言える訳ではありません。 このように、府大池には未だ正確にはわからない要素も多いため、今後もモニタリングを継続し、その場面に適した対処をしていく必要があると考えています。 担当:福山 幸拓(里環境の会OPU/ 生命環境科学域緑地環境科学類)

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