環境報告書2014年度
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20 OPU University Social Responsibility Report みなさんは府大池が一面真っ赤に染まっているのを見たことがありますか。これは「アゾラ」と呼ばれるアカウキクサ科の水生植物がその正体です1)。理学系研究科の上田英二准教授にうかがったところ、アゾラは葉の形態によって分類でき、葉の表面のトゲが2細胞(学名:Azolla.cristata, 和名:アメリカオオアカウキクサ=外来種)か、1細胞( A. liculoides, ニシノオオアカウキクサ/ A.japonica, オオアカウキクサ=在来種)かによって区別でき、府大池のアゾラは2細胞のトゲが確認できるため、外来種と考えられるそうです。ただ、関西では1枚の葉に2細胞と1細胞のトゲが混じった交雑種の存在が知られ、府大池のものも外来種、または外来種と在来種の交雑体であるという可能性もあるのだそうです。 生命環境科学研究科の平井規央准教授にお聞きしたところ、府大池のアゾラは平成20~21年頃に出現し、平成22年に急激に増殖したそうです。侵入経路として水路からの流入も考えられますが、周辺のため池などでも同時期に発生していることから、水鳥の体に付着して移入した可能性が最も有力なのだそうです。 府大池では、毎年、草食性の水鳥が北へ帰り水温の上昇する夏に一気に増殖し、池全体を覆うほどになります。ではなぜ、アゾラは増殖を続けるのでしょうか。原因のひとつとして、生活排水由来の栄養塩濃度の高い水(窒素とリンを含む水)が上流から流れ込むことによる「富栄養化」の問題が挙げられます。窒素とリンは、すべての生物に不可欠ですが、府大池の場合、流入量が過剰なためアゾラが増殖すると考えられます。2)アゾラの周囲への影響 工学研究科の中谷直樹准教授のお話しによると、アゾラが水面全体を覆うと光合成ができなくなった水中の植物プランクトンが減少するそうです。しかし、水面に浮くアゾラが放出する酸素のいくらかは水に溶け込みます。従って、水中の溶存酸素は魚が住めなくなるほど低下することはないそうです。また、アゾラは枯死すると根がちぎれて底に沈みますが、葉は浮いた赤い府大池?まま色素が抜けてそのまま分解されます。そのため、アゾラの増殖で池底のヘドロが増えることはなく、植物プランクトンが増殖している時よりも減少する傾向にあるとのことです。 このようにアゾラは、水質や底質との関わりでは必ずしも悪者ではありませんが、生物多様性や景観などの観点からは問題と言えそうです。 アゾラへの対策 府大池はアゾラの大量発生による悪影響が出始めていますが、生態学系と工学系の教員が協力してその生態系の保全に努めています。対策の一つとして、堰を設けて上流からの水量を制限するとともに、井戸水を導入して窒素とリンの濃度を薄めています。また平成20年度、21年度には府大池の水を抜き、底にたまったヘドロの除去を行いました。 府大池については、アゾラ対策も含め、今後もキャンパス・ビオトープ研究会、里環境の会OPU等の関係団体と連携し、本学のキャンパス・ビオトープ事業の一環として、必要な環境調査や保全対策を進めていくことになっています。私たちも府大池の現状を知ることで、生態系に影響を及ぼす人間活動について改めて考えるきっかけにしたいものです。  担当:福井友里菜

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