大阪府立大学

植物が紫外線を波長ごとに感じ分けているということを解明

更新日:2022年3月31日

岡澤先生らの写真

本学 大学院 生命環境科学研究科 応用生命科学専攻の岡澤 敦司 准教授、太田 大策 教授、鶴本 智大 さん(博士後期課程 2年(社会人ドクター)/日亜化学工業株式会社)、越智 ゆかり さん(博士前期課程 2年)、日亜化学工業株式会社 藤川 康夫 氏らの研究グループは、ナローバンド紫外線(UV)-LEDを用いることで、同じUV-B(280–315 nm)に区分される波長であっても、280 nmと310 nm 照射下でシロイヌナズナ(解説1)の応答が全く異なっていることを発見しました。

これまで、植物のUV-B応答に関して世界中で多くの研究が行われてきましたが、その多くは310 nmにピークを有するブロードバンドUVランプを用いたものでした。本研究では、網羅的な遺伝子発現解析(トランスクリプトーム解析(解説2))および代謝変動解析(メタボローム解析(解説3))によって、シロイヌナズナの280 nmと310 nm照射下での応答を包括的に理解することを試みました。その結果、ストレス応答やUV耐性に関わる化合物の生合成が、280 nm照射下でのみ顕著に誘導されることが明らかになりました。

この成果は、植物のUV適応の理解を深めるとともに、植物による有用物質生産などへ応用できるものと期待されます。

本研究成果は、「Scientific Reports」に2022年3月12日付けで掲載されました。

論文タイトル「Transcriptome and metabolome analyses revealed that narrowband 280 and 310 nm UV-B induce distinctive responses in Arabidopsis」

本研究のポイント

  • シロイヌナズナのナローバンド280 nmと310 nmのUV-B照射下での応答が大きく異なることを発見した。
  • UV-B応答として過去に報告されていた生理反応は、280 nm照射下でのみ強く誘導されることを解明した。
  • ナローバンドUV-B LEDを利用することで、植物のUV-B応答の理解が深まる。

SDGs達成への貢献

SDGs9番

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究はSDGs17のうち、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献しています。

用語解説

解説1 シロイヌナズナ

最初に全ゲノム配列が解読された実験モデル植物として世界中の研究者が扱っているアブラナ科の植物で、様々な変異体などお研究用の材料や、遺伝子配列などに関するデータベースが広く利用可能になっています。

解説2 トランスクリプトーム解析

現在、高速かつ大規模に遺伝子配列の解読が可能な次世代シーケンサーなどを用いることで、網羅的な遺伝子の解析が可能になっています。トランスクリプトーム解析は、ある状態の生体サンプル中で発現している遺伝子の配列と量を網羅的に解析する手法です。

解説3 メタボローム解析

高速液体クロマトグラフやガスクロマトグラフなどの化合物の分離技術と質量分析器による構造解析技術によって、ある状態の生体サンプル中に存在している化合物(代謝物)を網羅的に解析する手法です。

関連情報

お問い合わせ

大阪府立大学 大学院 生命環境科学研究科

准教授 岡澤 敦司(おかざわ あつし)

Eメール okazawa[at]plant.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。