大阪府立大学

大阪府立大学の創薬研究が武田科学振興財団・特定研究助成に採択―本学の総合知を活かして新しい創薬モダリティの創出をめざす!―

更新日:2021年12月20日

大阪府立大学の創薬研究(研究代表者:理学系研究科 教授 藤井 郁雄)が、公益財団法人 武田科学振興財団(解説1)による2021年度特定研究助成(4,000万円)(解説2)に採択されました。

本特定研究助成は、我が国の医学の発展に向け、研究機関が総力をあげて取り組む共同研究(学内または複数機関の融合研究)に対して助成されるもので、異分野間の研究、申請機関の注力研究・特有の研究、難病疾患研究などを重視した先見性・独創性の高い研究が対象とされます。本学では藤井教授を代表とし、藤井グループ、中瀬グループ、児島グループの3つのグループがプロジェクトチームを編成し、研究を推進します。

グループリーダーの写真

グループリーダー

氏名 職階 所属
藤井 郁雄 教授 理学系研究科 生物化学専攻
中瀬 生彦 教授 理学系研究科 生物化学専攻
児島 千恵 准教授 工学研究科 物質化学専攻

採択内容

研究題目

ポスト抗体医薬:細胞内送達を可能にする分子標的HLHペプチド(中分子医薬)を基盤とした新しい創薬モダリティ(解説3)の確立

助成金額

4,000万円

研究概要

分子標的HLHペプチドと血管内皮細胞増殖因子(VEGF)との複合体X線構造の図

分子標的HLHペプチドと血管内皮細胞増殖因子(VEGF)との複合体X線構造

近年、医療革新による創薬研究の多様化が進む中、抗体のような高い特異性(特定のタンパク質だけに作用する能力)と低分子医薬の汎用性(注射や内服など様々な投与法が可能)を兼ね備える中分子化合物(分子量:約1,000〜5,000)が注目されています。そこで、疾患関連タンパク質に特異的に作用する抗体様物質として、ペプチド性の分子標的中分子化合物(分子標的HLHペプチド)を開発しています。本研究では、分子標的HLHペプチド(藤井グループ)を基軸として、独自の機能性デンドリマー技術(児島グループ)や細胞膜透過性ペプチド技術(中瀬グループ)を融合して、細胞標的性と高い細胞内送達効率を同時に実現し、細胞内疾患関連タンパク質を標的とした新しい創薬モダリティを確立します。

研究代表者コメント

藤井 郁雄 教授

藤井 郁雄 教授

本研究では、大阪府立大学で開発された独自の創薬技術を融合し、3つのグループが一丸となって、細胞内の細胞内疾患関連タンパク質の機能を精密に制御する具体的かつ確度の高い手法を開発します。特異的な細胞内タンパク質の制御は、既存医薬品や抗体医薬では不可能であり、得られる研究成果は、創薬科学の新境地を開く大きな社会的効果があると確信しています。また、分子標的HLHペプチドの製造には、従来の化学製造設備で対応できるため製造コストが安価になり、その波及効果は計り知れません。未踏の研究課題ですが、現在最も注目されている研究の1つであり、本学の総合知を活かして取り組んでいきます。

SDGs達成への貢献

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究はSDGs17のうち、「3:すべての人に健康と福祉を」に貢献しています。

用語解説

解説1 公益財団法人武田科学振興財団

武田科学振興財団は、財団法人として、「科学技術の研究を助成振興し、我が国の科学技術および文化の向上発展に寄与する」ことを目的とし、武田薬品工業株式会社からの寄附を基金として1963年に設立されました。

解説2 特定研究助成

我が国の医学の発展に向け、研究機関が総力をあげて取り組む共同研究(学内または複数機関の融合研究)に対して助成するもので、国内の研究機関を対象にします。例えば、異分野間の研究、申請機関の注力研究・特有の研究、難病疾患研究(オーファン疾患を含む)などを重視した先見性・独創性の高い研究が該当します。申請は1機関1件とし、所属機関長の推薦のある候補に限ります。

解説3 創薬モダリティ

近年の医薬品開発の現場でよく耳にする「モダリティ」とは、治療手段(創薬技術・手法)のことを指します。これまでの医薬品の主なモダリティは、低分子化合物と抗体医薬でした。新たなモダリティして、核酸医薬や遺伝子治療などがありますが、本研究ではペプチド医薬に注力します。

関連情報

お問い合わせ

大阪府立大学 理学系研究科

教授 藤井 郁雄

Eメール fujii[at]b.s.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。