3D立体映像の映写に必要な「円偏光」の新たな発生法を開発―3D表示用有機ELディスプレイ等の製造コスト削減に期待―
更新日:2021年4月19日
大阪府立大学 大学院 工学研究科 教授の八木 繁幸、近畿大学 理工学部 応用化学科 准教授の今井 喜胤(よしたね)、大阪大学 大学院 理学研究科 化学専攻 講師の山下 健一らの研究グループは、3D立体映像を映し出す際に使われるらせん状に回転しながら振動する光、「円偏光」を、白金錯体(解説1) に外部から磁力を加えるというこれまでにない方法で発生させることに成功しました。この方法を使うことで、円偏光発光体の製造コストを安く抑えることができるため、将来的に、3D表示用有機ELディスプレイ等の製造コストの削減や、高度な次世代セキュリティー認証技術の実用化などに繋がることが期待されます。
本件に関する論文が、2021年3月30日(火)に、アメリカの学術出版社Wileyが発刊する化学分野の学術誌“Chemistry-An Asian Journal”にオンライン掲載され、Cover Picture(表紙)に採用されました。
論文タイトル「Magnetic Circularly Polarized Luminescence from PtIIOEP and F2‐ppyPtII(acac) under North‐up and South‐up Faraday Geometries」
掲載論文「Chemistry-An Asian Journal 」
本件のポイント
- 外部から磁力を加えることにより、室温でアキラル(解説2) な白金錯体から円偏光の発生に成功
- 加える磁力の方向を変えることで、円偏光の回転方向を制御し、右回転円偏光と左回転円
偏光の両方を選択的に取り出すことに成功 - 3D表示用有機ELディスプレイ等の製造コストの削減や、高度な次世代セキュリティー認証技
術の実用化などに繋がることが期待できる
研究助成資金等
本研究は、科学研究費補助金 基盤研究(C)(課題番号 JP18K05094)、新学術領域研究(課題番号JP 19H04600, JP 20H04678)、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「独創的原理に基づく革新的光科学技術の創成」(研究総括:河田 聡)研究課題「円偏光発光材料の開発に向けた革新的基盤技術の創成」(研究代表者:赤木 和夫)によって実施されました。
用語解説
解説1 白金錯体:
白金は、プラチナと呼ばれることもあり、単体では、白い光沢を持つ金属として
存在する。宝飾品、触媒、医療分野など多方面で利用され、有機化合物と結合した錯体
は、発光体としても利用されている。
解説2 アキラル:
ある現象の鏡写しの鏡像体が、元々の現象と重ね合わせることができる性質。
関連リンク
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お問い合わせ
大阪府立大学 大学院 工学研究科 教授 八木 繁幸
Eメール yagi[at]chem.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。