大阪府立大学

中百舌鳥キャンパス内にて、新種の水生寄生バチを発見

更新日:2021年4月16日

大阪府立大学(学長:辰巳砂 昌弘)生命環境科学研究科 緑地環境科学専攻 平井 規央教授、大学院生(当時) 神野 哲行さんらの研究グループは、中百舌鳥キャンパス内にある池で、潜水することができる寄生バチを発見しました。Canadian National Collection of Insects、神戸大学などとの共同研究によって、このハチは新種であることが判明。日本で発見されたことと、水面にいるガの幼虫を攻撃して産卵する様子が、日本を代表する怪獣「ゴジラ」がガの怪獣「モスラ」と戦い海面から出現する姿を彷彿させることから、「ゴジラコマユバチ〈学名:Microgaster godzilla〉」と命名されました。

ゴジラコマユバチ〈学名:Microgaster godzilla〉

ゴジラコマユバチ

潜水する、すなわち水生の寄生バチは非常に少なく、現在発見されている種のうち0.13%だけが、宿主を探す時に水に入ったり、幼虫期に水生の宿主の体内で寄生虫として水中で生活したりすることが分かっています。このゴジラコマユバチは生物学的にも形態学的にも非常に珍しい種で、成虫が完全に水中に潜ることが確認されたのは世界で初めてです。

ゴジラコマユバチが寄生するのは、浮草を食べるガの一種「ヒメマダラミズメイガ」です。ゴジラコマユバチは水中で物につかまりやすいように、それに適した湾曲した長い爪を持っています。実験では、雌のゴジラコマユバチが浮草の上から触角を使って、宿主となる水生のヒメマダラミズメイガの幼虫を探索し(動画)、見つけると水中に数秒間潜って幼虫を水面上に引き上げ、すばやく産卵管を幼虫に突き刺して産卵する(動画)様子の撮影に成功しました。ゴジラコマユバチは宿主の体内で孵化し、成熟するまで過ごします。

本研究成果は、日本時間 2020年10月30日にInternational Society of Hymenopteraが発行する雑誌「Journal of Hymenoptera Research」にオンライン掲載されました。

論文タイトル「Microgaster godzilla (Hymenoptera, Braconidae, Microgastrinae), an unusual new species from Japan which dives underwater to parasitize its caterpillar host (Lepidoptera, Crambidae, Acentropinae)」

SDGs達成への貢献

SDGs17「15:陸の豊かさも守ろう」

大阪府立大学は研究・教育活動を通じてSDGs17(持続可能な開発目標)の達成に貢献をしています。

本研究はSDGs17のうち、「15:陸の豊かさも守ろう」に貢献しています。

動画

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研究助成資金等

この研究は、日本学術振興会科研費(No. 19H00942)、およびカナダ農務省からのプロジェクト3199「“Systematics of beneficial arthropods in support of resilient agroecosystems” 回復力のある農業生態系を支援する有益な節足動物の分類学」によって部分的に支援されました。 また、本研究はCanadian National Collection of Insects、パナソニック株式会社(大阪門真市)、京都府立植物園の協力のもと、進められました。

関連情報

参考文献

「そもそも寄生バチとは?」 前藤 薫(編著) 『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』、一色出版、2020

お問い合わせ

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 緑地環境科学専攻 環境動物昆虫学研究グループ

教授 平井 規央

Eメール n_hirai[at]envi.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。