戸川教授の論文が日本物理学会の注目論文(Papers of Editors’ Choice)に選出
更新日:2020年12月18日
本学 工学研究科 電子数物系専攻 戸川 欣彦 教授と、放送大学 根岸 順一郎 教授、岡山大学 秋光 純 特任教授らの論文が、日本物理学会が発刊する「Journal of the Physical Society of Japan」の注目論文 (Papers of Editors’ Choice)に選出されました。
日本物理学会では、毎月、編集委員会の中で注目論文 (Papers of Editors’ Choice)を選出しており、本研究の紹介文が、日本物理学会誌と日本物理学会Webサイトの「JPSJ注目論文」にて掲載される予定です。
研究概要
大阪府立大学大学院 工学研究科 電子数物系専攻 戸川 欣彦 教授と、放送大学 教養学部 自然と環境コース 岸根 順一郎 教授、岡山大学 異分野基礎科学研究所 秋光 純 特任教授らの研究グループは、株式会社 日立製作所と共同で2次元性の強い磁性結晶K2CuF4において、渦と反渦の磁気模様が対を成して現れる様子を直接観察することに世界で初めて成功しました。
“消えては結ぶ磁気の渦”は、結晶が磁性を示すようになる温度をまたいで観察されます。この観察結果は、半世紀前に理論予言され2016年にノーベル物理学賞が授けられながらも、これまで実験が報告されていなかった“磁性体における2次元系特有の相転移(解説)現象”を示している可能性があります。
本研究成果は、物質が示す多彩な相転移現象に潜む普遍的な性質を明らかにする基礎学術的に重要な研究成果であり、2020年12月7日に日本物理学会が発刊する「Journal of the Physical Society of Japan」に掲載されました。
論文タイトル「Formations of Narrow Stripes and Vortex–Antivortex Pairs in a Quasi-Two-Dimensional Ferromagnet K2CuF4」
研究成果のポイント
- 2次元性の高い磁性結晶K2CuF4において渦と反渦の磁気模様が対を成して現れる様子を観察した。
- 電界放出透過型電子顕微鏡を用いて超感度の磁気構造解析を摂氏-269度近くの極低温でおこなった。この解析が実施可能な施設は日本にしかない。
- 観察結果は2次元系物質が示す相転移現象の特徴と整合しているがさらなる検証が必要。
- この物理現象は1970年代に理論予言され2016年にノーベル物理学賞が授けられたが、理論模型となった磁性体では実験報告がなかった。
用語解説
解説 相転移
水の分子は温度が上がるにつれ、氷から水、水から水蒸気とその形態を変える。このような状態の変化を相転移と呼び、水の相転移は、固体・液体・気体の各相の間で生じる。また、鉄は室温では強い磁気(強磁性)を帯びた磁石だが、770度以上の温度では磁気が消失する(常磁性)。このような現象も磁気特性の異なる相の間で生じる変化であり、典型的な相転移現象である。平面状(2次元)の物質ではその性質が大きく変わることが知られており、その性質の解明は物理学における重要な研究課題の一つとなっている。
研究体制について
本研究は、大阪府立大学 戸川 欣彦 教授と岡山大学 秋光 純 特任教授らが実験的検証を、放送大学 岸根 順一郎 教授が理論的考察を進めました。また、K2CuF4磁性結晶は、東京大学 物性研究所 平川 金四郎 名誉教授に提供いただきました。
研究助成金等
本研究は、JSPS科研費基盤研究(JP17H02767、JP17H02923)の助成による研究支援および文部科学省先端研究基盤共用促進事業(新たな共用システム導入支援プログラム JPMXS0410500020)で共用された機器を利用し行いました。
関連情報
お問い合わせ
大阪府立大学 大学院工学研究科 電子数物系
教授 戸川 欣彦
Tel 072-254-8216 Eメール y-togawa[at]pe.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。