大阪府立大学

2021年度 入学式式辞

更新日:2021年4月7日

辰巳砂学長の写真新入生の皆さん、大阪府立大学の学域ならびに大学院研究科への入学、おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。

1年前の入学式は、緊急事態宣言が発出される中、中止せざるを得ませんでしたが、本日ここに、2021年度入学式式典を挙行できますことを大変嬉しく思います。今年度、大阪府立大学に入学されましたのは、学士課程、大学院博士課程合計2,228名の皆さんです。本学を代表して、皆さんを歓迎します。また、この日を心待ちにしてこられたご家族やご関係の皆様にも、心からお祝い申し上げます。

このパンデミック下での生活は、世界中の殆どの人が生まれて初めて体験していることです。皆さんの場合は、この時期が受験の年と重なりました。この不安な1年間、健康に留意しながら受験を乗り越えて来られた皆さんには、その努力と忍耐に敬意を表すとともに、心からお疲れ様と申し上げたいと思います。皆さんにとって、大学や大学院への入学というこの節目の年が、記憶に残る年になると思いますが、流行り病や自然災害といった人間の力ではどうすることもできない困難に遭遇した際、人はどう振る舞うべきか、またそのようなピンチをどのようにしてチャンスに変えていくかを考えるきっかけにしていただければと思います。

さて、本学は1883年(明治16年)に設置された獣医学講習所が淵源になっており、まもなく創基140年を迎えようとしています。また、2005年(平成17年)には大阪府立の3大学の統合によって公立大学法人大阪府立大学が設立され、さらに一昨年、公立大学法人大阪が誕生し、その中に大阪府立大学、大阪市立大学、大阪府立大学工業高等専門学校を擁する組織となっています。いよいよ来年度からは大阪市立大学と統合して、大阪公立大学がスタートします。皆さんは大阪府立大学として最後の入学生ということになりますが、皆さんの入学された学域・学類、研究科は、皆さんが卒業されるまで、その体制は維持されますので、どうぞご安心ください。2年次以降は大阪市立大学と統合されるということをむしろメリットと捉えていただければ、大阪市立大学との交流も含めて大学生活を有意義なものにしていただけると考えています。

現在本学と大阪市立大学の間では、連携を密にしながら、大学統合に向けての準備を着々と進めているところです。72年前、新制大学としての大阪府立大学開学の折、当時の赤間文三府知事が「日本一の大学をつくる」と言われて当時の浪速大学(6年後に大阪府立大学)がスタートしました。その後本学からは10万人に及ぶ方々が卒業され、社会の各方面で活躍され、輝かしい発展を遂げて参りました。同じ140年の歴史と伝統を誇る大阪市立大学と統合して来年開学する大阪公立大学は間違いなく「日本一の大学」を目指すことになります。来年度からは新大学も含めた3大学が共存することになりますので、本学に入学された皆さんにはプラスになることはあっても、マイナスになることはありませんので、存分に学業に励んでいただきたいと思います。

大学とは

あらためて、大学とはどういうところでしょうか。これまでの教育機関との違いは何でしょうか。大学の基本機能は教育、研究、社会貢献です。知の継承、知の創造、知の活用を図る場と言い換えることも出来ます。学問をするところと一言で表現する方もおられるでしょう。あの福沢諭吉の「学問のすゝめ」は340万部突破の大ベストセラーですが、万民の平等を説いた「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」につづいて、そこに違いが生まれる理由を「学ぶと学ばざるとに由りてできるものなり」と説いています。また、学問については「専ら勤むべきは人間普通日用に近き実学なり」とも、「飯を炊き風呂の火を焚くも学問なり」とも述べています。あの明治維新の激動の時代、人は一生学び続け、一人一人が自分の頭で考えられる判断力を身につける重要性を説いていると私は思います。これは、今のこの不安定な変革の時代にも繋がる話ではないでしょうか。人生100年時代に際して、私は、皆さんには今後ずっと学び続けていただきたい、また溢れる情報を自分なりに整理し、自ら考え続けていただきたいと思っています。

大学は、皆さんが今後学び続け、考え続けるための基礎を築く場と考えています。また、大学がこれまでの教育機関と最も大きく異なる点は、知の創造、知の活用の場において、知を継承していくところにあると思います。つまり、研究・社会貢献の現場で、教育が行われていることが重要で、そのことこそ、皆さんが生きた学問を身につける原動力になるものと考えます。大学や大学院では、自ら進んで学ぶ「能動的な学び」が基本になっており、学生は「自主・自立」のもとで学ぶことを前提にしています。大学では、講義・演習・実習・実験・ゼミなどが用意されていますが、これらは皆さんが自身で習得し成長される「学び」を、最適な形でサポートするためのものです。本学では、昨年度のパンデミック下でのオンライン授業において、今後のあり方を教員が熟慮してオンデマンド教材に磨きをかけました。皆さんがこれから受けるサポートは、対面を基本とし、オンラインを併用したベストミックスを目指していきますので、楽しみに受講してください。また、これまでの教育機関では授業の選択肢はあまり多くなかったと思いますが、大学では、どんな学問を身につけるかについても、自分で履修計画を立てるのが基本になります。皆さんが将来社会に出て、様々な課題に取り組んでいくとき、1つの学問分野だけで解決できることは殆どありません。本学には副専攻など多彩なメニューが用意されていますので、皆さん独自のカリキュラムを構築して、「学び」を充実させてください。

本学の大学院ではこれまで、「学び」の計画を自らデザインすることを徹底した博士課程教育リーディングプログラムを大阪市立大学とともに進めてきました。これは、産業界で活躍できる研究リーダーを育成するための教育プログラムで、毎年その修了生が社会に出て、就職先の企業等から高い評価を戴いています。さらに文部科学省からは、事後評価として最高位のS評価を得ています。このプログラムの科目は、現在履修生以外にも受講できるようになっており、学域教育にもこのコンセプトの拡大を図っています。これまで本学は伝統的に産業界からの評価が高く、「企業の人事担当者から見た大学のイメージ調査」などでは、常に、全国の大学の中で上位にランクインし続けています。

本学の理念

さて、本学の理念は「高度研究型大学―世界に翔く(はばたく)地域の信頼拠点―」です。そして、教育・研究・社会貢献において「多様」「融合」「国際」という三つの視点を大切にしています。「多様」については、文化の多様性、専門分野、価値観の多様性に加えて、それらを担う学生、教員、職員の多様性、そしてグローバルやダイバーシティを重んじています。本学は、皆さんの学習意欲や知的好奇心に十分応えられる様々な教育カリキュラムに加えて、世界最先端の充実した研究設備や多彩な研究センターを有しています。

また、学問を通じた知的活動だけでなく、学園祭やクラブ活動、ボランティア活動、地域での交流活動なども活発に行われており、企画力、創造力、コミュニケーション力など、あらゆる能力を養うことが出来ます。自分の裁量で自分を磨くことが出来るのが大学で、ここでの経験はすべて皆さんの血となり肉となります。自由を謳歌できるこの限られた時間に何をなすべきか、大学でしか出来ないことを是非自らの力で見つけていただければと思います。新しく始まる皆さんの大学・大学院生活が充実したものになることを心から願っています。

以上をもちまして、新入生の皆さまの今後の飛躍を期待して式辞と致します。本日は、誠におめでとうございます。

2021年4月6日
大阪府立大学学長 辰巳砂 昌弘

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