大阪府立大学

2020年度 入学祝辞

更新日:2020年4月6日

辰巳砂学長の写真新入生の皆さん、学域ならびに大学院への入学、誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。学士課程、大学院博士課程合わせて2,199名の皆さんが、この4月大阪府立大学に入学されました。本学を代表して、皆さんを歓迎します。また、この日を心待ちにしてこられたご家族やご関係の皆さまにも、心からお祝い申し上げます。

入学式は当初大阪府立国際会議場にて挙行する予定でしたが、新型コロナウイルス対策の一環で、中止せざるを得なくなりました。皆さんの安全確保と感染拡大防止の観点から、苦渋の決断であったことをどうかご理解くださいますようお願いいたします。

現在、感染症拡大で世界中が大変な状況にありますが、皆さんが受験された今年1月から3月にかけても、日本中が本当に大変な時期でした。あの不安な時期、健康に留意しながら受験を乗り越えて来られた皆さんには、その努力と忍耐に敬意を表すとともに、心からお疲れ様と申し上げたいと思います。先月本学の学位記授与式も中止になりましたが、それでも本学から約2,000名の卒業生、修了生を送り出すことができました。ちょうど今年の博士後期課程修了があの東日本大震災の年に学士課程に入学した学年に当たり、忘れがたい年であったという感想を述べていました。皆さんにとっても入学という節目の年が記憶に残る年になると思いますが、流行り病や自然災害といった人間の力ではどうすることもできない困難に遭遇した時、人はどう振る舞うべきかを考えるきっかけにしていただければと思います。

「考える」ということ

「考える」といえば、大学はこれまでの教育機関にもまして考えることを大切にしているところです。そして元来「考える」ということは楽しいことなのですが、考えるためには、その基となる知識をしっかりと身につける必要があります。「学びて思わざれば則ち罔(くら)し、思いて学ばざれば則ち殆(あやう)し」と言われるように、「考える」ことが、独断に陥らないように「学ぶ」のです。大学や大学院では、ただ人から教えられることを学ぶのではなく、自ら進んで学ぶ「能動的な学び」が基本になります。つまり、学生は「自主・自立」のもとで学ぶことを前提にしています。この点について、まずは自覚を持っていただくことを皆さんにお願いします。大学では、講義・演習・実習・実験・ゼミなどが用意されていますが、これらは皆さんが自身で習得し成長される「学び」を、最適な形でサポートするためのものです。また、どんな学問を身につけるかについても、自分で履修計画を立てるのが基本になります。皆さんが将来社会に出て、様々な課題に取り組んでいくとき、一つの学問分野だけで解決できるということは皆無といっても過言ではありません。本学には副専攻や学位プログラムなど多彩なメニューが用意されていますので、是非皆さん独自のカリキュラムを構築して、「学び」を充実させてください。「学び」を充実させることは「正しく考えること」に繋がります。本学で考えることの楽しさを、身をもって体験していただければと思います。

「学び」の計画をデザインする

本学で「学び」の計画を自らデザインすることを徹底した学位プログラムに、博士課程教育リーディングプログラム「システム発想型物質科学リーダー養成学位プログラム」があります。大阪市立大学とともに進めてきたこのプログラムは、産業界で活躍できる研究リーダーを育成するための修士・博士5年一貫のプログラムで、すでにその修了生が社会に出て、就職先の企業等から高い評価をいただいております。それだけでなく、この3月には文部科学省から、最高位のS評価を得ています。現在、履修生以外にもこのプログラムの科目を受講できるように拡大を図っており、やがてすべての皆さんにこのコンセプトを広げていく計画です。

これまで本学は特に産業界からの評価が高く、昨年度日本経済新聞社と日経HRが発表した「企業の人事担当者から見た大学のイメージ調査」で、全国の大学の中で総合10位にランクされました。この調査は、企業の人事担当者を対象に、過去2年間に採用した学生から見た大学のイメージなどに基づいています。特に本学は「対人力」が高い評価で、コミュニケーション能力が高い、ストレス耐性が高い、柔軟性、適応力があるとコメントされています。

さて、本学の理念は「高度研究型大学―世界に翔く(はばたく)地域の信頼拠点―」です。本学には、中百舌鳥、羽曳野、りんくうという3つのキャンパスがあります。鳥にちなんだ地名や空の玄関口の近くにあることから、“はばたく”というイメージがふさわしい大学です。そして、教育・研究・地域貢献活動において「多様」「融合」「国際」という三つの視点を大切にしています。

文化の多様性は、その交流・革新・創造の源であり、人類に正義・自由・平和をもたらすものであるとの視点に立って、本学では専門分野、価値観の多様性とともに、それらを担う学生、教員、職員の多様性、そしてグローバルやダイバーシティを重んじています。これまで「垣根のない大学でつながりを」というモットーのもと「知」の創造拠点をめざしてきました。常に新しいものにチャレンジする高い志をもって、自分の周りに垣根をつくることなく、「つながり」をもとめて活動しています。ここには、皆さんの学習意欲や知的好奇心に十分応えられる多彩な教育カリキュラムに加えて、世界最先端の充実した研究設備、植物工場研究センターに代表される実証実験研究所、さらには21世紀科学研究センターと呼ばれる約50のユニークな学際研究所があります。基礎から応用まで、教職員・学生が一丸となって取り組む多様な学術研究は世界中に発信され、学界や産業界から高い評価を受けています。学長である私自身も、学生の皆さんとの研究の時間を今でも大切にし、長年取り組んできた「全固体電池」という次世代蓄電池の研究を続けています。私も含め、これから皆さんを迎える教員、職員、在学生には熱い思いがあり、新しく始まる皆さんの大学・大学院生活が充実したものになることを心から願っています。

自らの手で

学問を通じた知的活動だけでなく、学園祭やクラブ活動、ボランティア活動、地域での交流活動なども活発に行われており、企画力、創造力、コミュニケーション力など、あらゆる能力を養うことができます。学びの場も、3つのキャンパスだけでなく、難波には“I-siteなんば”と呼ばれる都心拠点があります。また、留学生や海外からのゲストと交流するための“I-wingなかもず”という国際交流会館や、百を越える国際交流協定締結大学が世界中にあります。このような様々な“知”の拠点を活用し、皆さん自身の発想で、地域や世界への一層のつながりを作っていただければと思います。自分の裁量で自分を磨くことができるのが大学で、ここでの経験はすべて皆さんの血となり肉となります。自由を謳歌できるこの限られた時間に何をなすべきか、大学でしかできないことを是非自らの手で見つけていただければと思います。

ところで、本学のルーツは1883年(明治16年)に設置された獣医学講習所であり、創基140年を目前にしております。新制大学としては、工学、農学を中心に浪速大学が約70年前1949年(昭和24年)に設立され、その後大阪府立大学となりました。設置者である当時の大阪府知事が「日本一の大学をつくる」と言われて設立されたことを誇りとしています。15年前、大阪府立の3大学が統合されて公立大学法人大阪府立大学が誕生しました。そして、1年前2019年に公立大学法人大阪が設立され、その中に大阪府立大学、大阪市立大学、大阪府立大学工業高等専門学校を擁する組織となっております。現在大学間での交流・連携を密にしながら、新大学設立に向けて大学統合の歩みを着実に進めているところです。これから開学をめざす新大学は間違いなく「日本一の大学」をめざすことになります。大阪府立大学に入学された皆さんには、一法人二大学という貴重な時代のメリットを存分に活かして、大阪市立大学との交流も含めて大学生活を有意義なものにしていただければと思います。

最後に

繰り返しになりますが、学問を通じて、課外活動を通じて、様々な素晴らしい出会いを大切にされることを切望しています。本学で学んだ学問、良き友、巡り会えた良き師、これらが、皆さんが社会に出て活躍される礎になります。10年先、20年先さらには何十年先に、大阪府立大学で学んで良かったと思うことができるよう祈念いたしております。

以上をもちまして、本日から始まる新入生の皆さまの新しい生活における飛躍を期待して祝辞と致します。ご入学、誠におめでとうございます。

2020年4月6日
学長 辰巳砂 昌弘

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