高校生の頃、私は「地学」が大変苦手でした。暗記ばかりで少しも面白くなかったのです。大学に入学したのは、1960年代に西欧や米国の研究者を中心に構築されたプレートテクトニクス理論が、日本でも徐々に受け入れられるようになってきた時期に当たります。大学生になって、地震や火山活動など様々な地殻変動をプレートの運動でエレガントに説明するこの理論を知り、私の意識は一変しました。「地学の世界」の虜になってしまったのです。以来、40年間余り、世界各地の山々や深海底の地質調査を通じて、「地学の世界」と深く関わってきました。

私たちの地球観は、学問の進歩と相まって今なお大きく変わりつつあります。地学に対する興味も尽きることはありません。

今回は、プレートの主要な活動の場である海洋域に焦点をあて、地球の神秘な世界を掘り起こしてみたいと思います。海洋底では実に不思議なプレートの営みが行われていますが、一般の方々がそれらを知る機会はほとんどないのが現状です。今回の話題をきっかけにして、地球という惑星のすばらしさを共有し、地球とのうまいつきあい方を考えていただけるようになることが私の願いです。

【カタリスト】 前川 寛和（大阪府立大学副学長、高等教育推進機構長、大学院理学系研究科 教授）

【持ち物】「地球」「地学」「岩石」というテーマに沿った本

〈アカデミックカフェとは？〉
「まちと人」「人と人」 とをつなぐ新しいコミュニティの創造をめざしている「まちライブラリー＠大阪府立大学」で、本学教員が、通常の講演や授業とは雰囲気を変えて自身の研究やライフワークを紹介するイベントです。