大阪府立大学

高電圧処理不要で高い性能を示す圧電体膜の低温作製に成功―高性能の圧力・加速度センサや、振動発電の実現に期待―

更新日:2020年10月7日

大阪府立大学大学院 工学研究科 吉村武准教授と、東京工業大学 物質理工学院 材料系の舟窪浩教授(元素戦略研究センター兼任)、舘山明紀大学院生(博士後期課程2年)、伊東良晴博士研究員、工学院 電気電子系の黒澤実准教授と折野裕一郎研究員らの研究グループは、毒性元素の鉛を含まない圧電体であるニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO3)の膜を、水熱法により300度以下の低温で作製することに成功しました。

研究概要

従来の圧電体では、電気的な破壊のリスクを伴う高電圧処理が不可欠でしたが、今回作製した圧電体膜ではこの処理が不要であることが分かりました。その見積もったセンサ性能定数(g31)(解説1)は、長期間安定して使用できる酸化物膜としては最高値であり、これまで最高性能が報告されている窒化物膜にも迫る値を達成しました。この成果により、高電圧処理が不要で特性劣化が少ない、大面積や3次元構造のセンサやエナジーハーベスタ(振動発電機)(解説2)の実現が期待されます。

本成果は、東京工業大学のほか、物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点の独立研究者の清水荘雄博士、上智大学の内田寛教授、東北大学 金属材料研究所の今野豊彦教授、木口賢紀准教授、白石貴久博士の研究グループによるもので、10月6日付(現地時間)で米国物理学会誌「Applied Physics Letters」に掲載されました。

論文タイトル「Good piezoelectricity of self-polarized thick epitaxial (K,Na)NbO3 films grown below the Curie temperature (240°C) using a hydrothermal method」

研究成果のポイント

  • 高電圧処理を必要としない圧電体膜の作製に成功
  • 酸化物膜では最高値であり、窒化物膜にも匹敵するセンサ性能定数を達成
  • 力を利用したセンサおよびエナジーハーベスタ(振動発電機)への応用に期待

研究助成資金等

今回の研究の一部は、科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 産業ニーズ対応タイプ「セラミックスの高機能化と製造プロセス革新」(課題番号 JPMJTS1616)の一環として行われました。

用語解説

解説1 センサ性能定数(g31)

センサ等の特性評価に用いられる値。圧電定数を誘電率で割った値に比例します。

解説2 エナジーハーベスタ(振動発電機)

環境(光、振動、熱など)を利用して発電を行うデバイス。本発表では、振動を利用する。様々なデバイスと組み合わせることで、バッテリーを必要としないセンサなどの開発が可能になりました。

お問い合わせ

大阪府立大学大学院 工学研究科

准教授 吉村 武

Tel 072-254-9327 Eメール tyoshi[at]pe.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。