「磁性体における2次元融解現象」世界で初めて実証に成功!
更新日:2019年1月17日
大阪府立大学の戸川 欣彦 教授と放送大学の岸根 順一郎 教授らの研究チームが、2次元特有の3段階融解現象が左右対称性の破れた(解説1)「キラル磁性体(解説2)」の薄膜で起きると予想し、磁性体として世界で初めて実証に成功しました。過去40年にわたって積み残された「磁性体における2次元融解現象」を始めて実証したものであり、基礎学術的に重要な研究成果です。
本研究成果は、2019年1月9日(日本時間)に、アメリカ物理学会発刊「Physical Review Letters」誌に論文として掲載されました。
論文タイトル「Anomalous Temperature Behavior of the Chiral Spin Helix in CrNb3S6 Thin Lamellae」
研究成果のポイント
- 2次元特有の3段階融解現象が左右対称性の破れた「キラル磁性体」の薄膜で起きると予想し、磁性体として世界で初めて実証に成功しました。
- キラル磁性体中で実現するらせん磁気秩序の周期構造を観察し、磁気秩序が「解ける」様子を捉えました。
- 理論物理学の「場の理論と繰り込み」と呼ばれる手法を駆使し、実験結果が整合的に表されることを示しました。
- 過去40年にわたって積み残された「磁性体における2次元融解現象」を世界で初めて実証した研究成果です。
用語解説
解説1 対称性の破れた
例えば、磁性体が磁気を帯びた状態では、磁気を担う電子のスピン(極微の棒磁石とみなせる)が整列している。この整列は物質中で長距離にわたる秩序(長距離秩序)が形成された「対称性が低い状態」である。一方、高温になると磁性体中のスピンの整列状態はランダムになり「対称性が高い状態」となる。つまり、相転移はスピンがランダムに揺らいだ高い対称性の相から低い対称性の相への自発的な変化とみなせる。このように、相転移を「対称性とその破れ」という視点で理解することができる。
解説2 キラル磁性体
左右対称性の破れた磁性体(キラル磁性体)が示す磁性。スピン配列が片巻き方向にねじれたらせん構造を示すことが知られている。
研究助成資金等
本研究はJSPS科研費基盤研究(B)(JP17H02767、JP17H02923)の助成を受けて行いました。
お問合せ先
大阪府立大学 大学院 工学研究科 電子数物系 教授 戸川 欣彦
Tel 072-254-8216Eメール y-togawa[at]pe.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。放送大学学園 教養学部 自然と環境コース 教授 岸根 順一郎
Tel 072-298-4186Eメール kishine[at]ouj.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。