公立大学法人大阪府立大学

トポロジカル絶縁体中のスピン電流の光制御実証に成功!

更新日:2018年10月19日

大阪府立大学の大学院理学系研究科 博士後期課程 3年 竹野 広晃、溝口 幸司 教授、および情報通信研究機構の齋藤 伸吾 主任研究員らの研究グループは、トポロジカル絶縁体薄膜(解説1)に、電場や磁場をかけずに、光を照射するだけで、スピン電流(スピン偏極(解説2)した光電流(解説3))を生成させることに成功しました。さらに、照射する光の偏光(解説4)を操作することで、スピン電流の方向が制御可能であることを実証しました。(図 参照)

本開発のポイント

図:トポロジカル絶縁体薄膜に右回り円偏光(R偏光)(a)、および左回り円偏光(L偏光)(b)の光を照射したときの表面を流れるスピン電流の模式図。青丸のeは電子、水色矢印はスピン、黄色矢印は電子による光電流の向きを表します。R偏光とL偏光で、光電流の向きとスピンの向き(スピン電流)が変わることを示している説明図

図:トポロジカル絶縁体薄膜に右回り円偏光(R偏光)(a)、および左回り円偏光(L偏光)(b)の光を照射したときの表面を流れるスピン電流の模式図。青丸のeは電子、水色矢印はスピン、黄色矢印は電子による光電流の向きを表します。R偏光とL偏光で、光電流の向きとスピンの向き(スピン電流)が変わることを示しています。

  • トポロジカル絶縁体薄膜に光を照射することで、電場や磁場をかけずにスピン電流(スピン偏極した光電流)を試料表面に生成することに成功しました。
  • 照射する光の偏光を操作することで、スピン電流の方向が精密かつ選択的に制御できることを実証しました。
  • この成果は、次世代のトポロジカル絶縁体を用いたオプトエレクトロニクスデバイスやスピントロニクスデバイスの向上に重要な役割を果たすことが期待されます。

概要

スピンの自由度を積極的に利用したスピントロニクスが期待されています。トポロジカル絶縁体はスピントロニクスに利用される材料として期待されており、我々は、結晶軸を揃えた薄膜試料の作製に成功しました。通常、電流は電場や磁場などの外場を試料にかけることで流すことができますが、今回、我々は、トポロジカル絶縁体薄膜に、外場をかけずに、偏光した光を照射するだけで、スピン電流を試料表面に流すことができることを、試料表面に電流が流れることによって発生するテラヘルツ波(解説5)を測定することにより確認しました。また、光の偏光を操作することによって、精密かつ選択的にスピン電流の流れる方向を制御できることを明らかにしました。(図 参照)

本成果は「Scientific Reports」オンライン版で 2018年10月18日に公開されました。
論文タイトル「Optical control of spin-polarized photocurrent in topological insulator thin films」

用語解説

解説1  トポロジカル絶縁体

トポロジカル絶縁体は、数学的なトポロジーによって特徴づけられる絶縁体の一種です。結晶内部は絶縁的な特性を持つ一方で、通常の絶縁体とは異なり、その表面は金属的な伝導状態を示します。さらに、表面に存在する電子はスピン偏極しており、その偏極方向は電子の運動方向に対して常に垂直な方向を保ちます。2016年に、トポロジー相およびトポロジー相転移に関して、D. J. Thouless 教授(アメリカ合衆国 ワシントン大学)、F. D. M. Haldane 教授(アメリカ合衆国 プリンストン大学)、J. M. Kosterlitz 教授(アメリカ合衆国 ブラウン大学)の3氏がノーベル物理学賞を受賞しています。

解説2 スピン偏極

スピンとは、電子の自転でイメージされることが多く、磁気的な性質を持ちます。スピンが空間的にある特定の方向を向いている状態を、スピン偏極しているといいます。

解説3 光電流

光を吸収し、励起状態となった電子によって流れる電流を光電流といいます。光電流全体のスピンが偏極している場合を特にスピン電流(スピン偏極した光電流)といいます。

解説4 光の偏光

電磁波である光は波の性質を持ち、電場と磁場が振動しながら伝播していきます。偏光とは電場の振動方向を意味し、光の伝播方向から見て、電場が直線的に振動しているものを直線偏光(p偏光)、円形(楕円形)に回転しながら振動しているものを円偏光(楕円偏光)といいます。また、円偏光には回転方向があり、特に電場が時計回りに回転する偏光を右回り円偏光(R偏光)、反時計回りに回転する偏光を左回り円偏光(L偏光)といいます。

解説5 テラヘルツ波

振動数が0.1 THzから10 THzの電磁波をテラヘルツ波といいます。電磁波は電流の大きさや方向の時間変化によって放射されます。この特徴を利用することで、テラヘルツ波の測定から電流の情報を非接触に得ることができます。

お問い合わせ

公立大学法人大阪府立大学 大学院 理学系研究科

教授 溝口 幸司

Tel 072-254-9712 Eメール k.mizoguchi[at]p.s.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。