大阪府立大学

人工抗体の形成による特異結合型マイクロウェルプレートの開発―用途に合わせテーラーメイドで迅速に標的細菌を検出―

更新日:2018年3月7日

大阪府立大学の大学院工学研究科 椎木 弘 准教授、長岡 勉 教授と府大発ベンチャー企業のグリーンケム株式会社らの研究グループは分子インプリンティング技術を利用して標的細胞(抗原)に特異結合する人工抗体を形成したマイクロウェルプレート(解説1)を開発し、細菌のハイスループット検出(解説2)に成功しました。

本開発のポイント

標的細胞に高選択的な人工抗体を搭載したマイクロウェルプレートを開発し、抗原のハイスループット検出に成功

本開発の特徴と効果

人工抗体による標的細菌の認識の概念

人工抗体による標的細菌の認識の概念

  • 免疫によらず迅速に抗体が作製可能
  • 標的に応じてテーラーメイドで対応可能
  • 標的細胞と人工抗体が自発的に結合
  • 高選択的な検出(選択性10倍以上)
  • 多検体を一括検出
  • 検体に含まれる種々の細菌を一括特定
  • 試料採取からの検出時間を大幅短縮(30分以内)

概要

微生物、特に細菌の検出は、医療・創薬・公衆衛生や食の安心安全の確保、機能性食品の品質管理などにおいてその重要性が増しています。本開発によれば、市販のマイクロウェルプレートのウェル内壁に細胞鋳型を形成することで、簡単に標的細菌を検出することができます。この細胞鋳型は自発結合性を有しており、人工抗体として機能します。したがって、ウェルに微小量(0.040~0.10mL)の被検試料を滴下し、プレートリーダー(解説3)で光学信号を読み取る簡単な操作で標的細菌を検出することができます。市販のマイクロウェルプレートは96~384個のウェルが配列してなっており、それぞれのウェルに人工抗体を形成することで、多くの被検試料を一括して測定することができます。さらに、それぞれのウェルに異なる人工抗体を形成することで、一つの被検試料に含まれる異種の細菌を最大384種類検出することが可能です。また、分子インプリンティングポリマー(MIP)技術によって形成される人工抗体はテーラーメイドできるため、新たな微生物(あるいはウイルス)の脅威に迅速に対応する有効な手段となります。今後、マイクロウェルプレートの更なる改良を進め、実用化を目指します。

本開発は王立化学会「Analyst」オンライン版で 2018 年 1 月 23 日に公開されました。なお、4月に出版される冊子体「Analyst」誌の表紙に選出されました。

論文タイトル「A rapid and specific bacterial detection method based on cell-imprinted microplates 」

用語解説

解説1 マイクロウェルプレート

マイクロタイタープレート、マイクロプレートなどとも呼ばれ、プレートの外形は共通であるが、6~9600個のくぼみ(ウェル)の配列からなるプラスチック製の分析器具である。ウェルの数によりその容量は異なるが、よく用いられる96(12×8)ウェルでは0.40mL、384(16×24)ウェルでは0.050~0.10mLが一般的である。

解説2 ハイスループット検出

時間と経費を節約するための高速化合物検出系のこと。

解説3 プレートリーダー

マイクロプレートに入れた多数の試料の光学的性質(吸光や蛍光、化学発光、蛍光偏光)を測定する分析機器である。一度に多くの微量試料を検出することが可能であるため、核酸、タンパク質、細胞などのバイオ分析に広く用いられる。

研究助成等

本開発は農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(25020A)、JST研究成果展開事業(MP27115662969)により得られた成果に基づき、JSPS科学研究費補助金(16H04137)からの支援により行われました。

関連リンク

グリーンケム株式会社 Webサイト

大阪府立大学大学院 工学研究科 分子認識化学研究グループの研究成果をもとに起業した会社。代表取締役は山本 陽 二郎 氏。

お問い合わせ

公立大学法人 大阪府立大学大学院 工学研究科

准教授 椎木 弘

Eメール shii[at]chem.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。