大阪府立大学

有機化合物の結晶中における発光特性を解き明かす新規発光種「励起マルチマー」を発見

更新日:2015年11月13日

有機化合物の結晶中における発光特性を解き明かす新規発光種「励起マルチマー」を発見

―有機ELなどの発光デバイスに向けた新材料開発に貢献―

大阪府立大学大学院工学研究科の酒井敦史(博士後期課程3年)、太田英輔助教、松井康哲助教、水野一彦名誉教授、池田浩教授らの研究グループは、有機ホウ素錯体の結晶中における分子の積み重なり方と発光現象との相関を解明し、新規発光種「励起(れいき)マルチマー」を発見しました。

この成果は、未解明な点が多かった有機化合物の固体中での発光現象を、自在に制御する新手法の確立につながることが期待されます。

研究成果のポイント

  1. 構造が互いに類似した有機化合物は、溶液中でよく似た発光を示すが、結晶中では大きく異なる発光を示すことが多く、発光特性の予測や制御はこれまで困難とされていた。
  2. 有機ホウ素錯体の結晶中での分子の積み重なり方と発光特性との相関を解明した。
  3. 結晶中で無限に積み重なった分子から生じる新規発光種「励起マルチマー」を発見した。
  4. 本研究は、有機ELなどの発光デバイスのための、新規な発光材料の開発につながると期待される。

研究概要

通常、有機化合物の発光性については、希薄な溶液中で、単一分子の性質として研究されてきました。一方、有機ELに代表されるディスプレイや照明のためのデバイスは、発光性の有機化合物を固体で利用しています。そのため、有機化合物の固体中での発光現象は、近年特に注目を集め、盛んに研究が行われています。しかし、しばしば有機化合物は、固体になると溶液中とはまったく異なる発光特性(発光波長(発光色)、発光寿命、発光量子収率[解説1]などの性質)を示します。固体中では多数の分子が規則的に積み重なっていますが、発光特性はその積み重なり方に大きく影響されるため、予測したり制御したりすることは困難でした。

そこで研究グループは、形状が少しずつ異なる置換基[解説2]を導入した有機ホウ素錯体を多数合成し、置換基の形状と固体中における分子の積み重なり方の間の法則性を明らかにしました。さらにその法則性から、積み重なり方のわずかな違いによって、結晶の発光特性、特に発光色や発光寿命を制御できることを見出し、無限に積み重なった分子から生じる「励起マルチマー(励起多量体)」という新しい発光種を発見しました。この成果は、これまで困難だった、有機化合物の固体中での発光特性の予測・制御を可能にし、有機ELなどのデバイスに向けた発光材料の新開発に重要な指針を与えるものと期待されます。

なお、この成果に関する論文は、ドイツの総合化学雑誌Chemistry-A European Journalに11月9日オンライン掲載されました。

論文タイトル:Novel Fluorescence Domain “Excited Multimer” Formed upon Photoexcitation of Continuously-stacked Diaroylmethanatoboron Difluoride Molecules with Fused π-Orbital in Crystals(結晶中で連続的に積層し,融合したπ軌道をもつジアロイルメタナートボロンジフロリド分子の光励起で形成される新規発光種「励起マルチマー」)

参考図:有機ホウ素錯体1a-cの結晶内での発光種と発光の様子

参考図:有機ホウ素錯体1a-cの結晶内での発光種と発光の様子

用語解説

解説1 発光量子収率

発光種が失活する際に、実際にどれだけ発光するかの効率を示す尺度。すべてが発光する場合は1、まったく発光しない場合は0となる。

解説2 置換基

特定の構造をもち、有機化合物の主骨格に結合する原子団。

お問い合わせ

大阪府立大学大学院 工学研究科

担当 池田 浩 教授

Tel 072-254-9289 Eメール ikeda[at]chem.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。