公立大学法人大阪府立大学

超伝導転移温度の高い2ホウ化マグネシウム薄膜の室温成膜法を開発

更新日:2015年10月20日

超伝導転移温度の高い2ホウ化マグネシウム薄膜の
室温成膜法を開発
―省エネルギーな超伝導素子の実用化へ期待―


公立大学法人大阪府立大学(理事長:辻󠄀 洋)大学院工学研究科の宍戸寛明助教、吉田卓矢(博士前期課程2年)、石田武和教授は、超伝導転移温度が27K(約−246℃)(解説1)と従来型の超伝導素子材料よりも高い超伝導転移温度を示す2ホウ化マグネシウム(MgB2)のエピタキシャル膜(解説2)を、110℃の従来にない低温で成膜することに成功しました。


超伝導(解説3)は、リニアモーターカーや送電線など大型機器への応用だけではなく、超高感度な磁気センサーとして、脳磁計、心磁計、地下資源探査などにも応用されています。ところが、従来の超伝導素子は4.2K(約−269℃)程度の極低温まで冷やさなければ動作せず、冷却に大掛かりな装置や高価な寒剤が必要でした。今回、研究チームは27Kで超伝道転移を示すMgB2薄膜の成膜に成功しましたが、20K(約−253℃)程度であれば冷却に必要な装置を大幅に簡略化でき、コストの削減、省スペースが達成されます。


これまでの応用研究を大きくブレークスルーするこの技術により、半導体等で広く普及している一般的な微細加工法フォトリソグラフィを用いて、MgB2の微細構造や多層構造の作製がどこでも簡便に安価に行うことが可能となり、MgB2の飛躍的な普及につながるとともに、MgB2薄膜での超伝導素子の応用に大きく道が開かれることが期待されます。また、国が進める水素化社会で一層の活用が見込まれる液体水素での冷却でも実用化できます。

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なお、本研究の成果は、応用物理学会速報誌アプライド・フィジックス・エクスプレス(Applied Physics Express)に10月21日にオンライン(オープンアクセス)掲載されました。


論文タイトル:Ambient temperature epitaxial growth of MgB2 thin films with a Mg buffer layer(Mg中間層を用いた常温でのMgB2薄膜のエピタキシャル成長)

著者:宍戸寛明、吉田卓矢、石田武和

掲載論文(アプライド・フィジックス・エクスプレス Webサイト)

解説図

研究成果のポイント

  • 基板上にマグネシウム(Mg)層を下地層として製膜することで2ホウ化マグネシウム(MgB2)超伝導体の110℃での製膜に成功しました。膜の性質もエピタキシャル(単結晶)膜と優れたものであることが分かりました。
  • 得られたMgB2超伝導体薄膜は超伝導転移温度27Kにて超伝導を示しました。これは従来の超伝導素子よりも簡易な冷凍機で超伝導素子を動作させられます。
  • 今回開発された成膜手法を応用することにより簡便に微細構造や多層構造を持った超伝導素子が簡便に低コストで作製することができます。これは今まで実用化が進んでいなかったMgB2超伝導体の素子応用を強力に推進する可能性があります。

用語解説

解説1 ケルビン

国際単位系(SI)の基本単位で、温度の単位。物質を構成する原子・分子の熱による振動がすべて静止する温度を零度、水の三重点を273.16度(K)と定義されています。セ氏温度に273.15度を加えた値で表します。単位の表記はK。絶対温度。

解説2 MgB2エピタキシャル薄膜

2001年、日本の研究者(秋光教授ら)により発見された新しい超伝導体です。マグネシウムやボロンは資源小国である日本でも簡単に入手できることから、我が国でも実用化に向けた開発が進められてきました。本研究では4H‐SiC単結晶基板の全面にMg層を30nm(1億分の3メートル)成長させ、更にその上に2ホウ化マグネシウム(MgB2)層を100nm(1000万分の1メートル)成長させました。Mg、MgB2共に結晶の方位は単結晶基板の方位と良く揃っています。このような膜をエピタキシャル膜と呼びます。蒸着は分子線エピタキシー法と呼ばれる真空蒸着法の一種で10−6
Pa(パスカル;1000億分の1気圧)の超高真空下で行いました。

解説3 超伝導

超伝導体は超伝導転移温度以下で電気抵抗が急激に減少しゼロを示します。そのためエネルギーのロスなしに大きな電流を流すことが可能となります。ただし流せる電流には上限があり、臨界電流Jc以上の電流を流すと超伝導は壊れてしまうため、実用上は大きな臨界電流を持たせることが重要になります。抵抗がゼロになる性質を利用して、強力な電磁石(超伝導磁石)が作られています。強力な超伝導磁石はリニアモーターカーやMRIのほか、超伝導の性質を生かした電子素子としても利用されています。

お問い合わせ

大阪府立大学大学院 工学研究科

担当 宍戸 寛明 助教

Tel 072-254-9494 Eメール shishido[at]pe.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。