公立大学法人大阪府立大学

細胞から分泌される小胞(しょうほう)「エクソソーム」の、がん細胞への取込み効率が増強される仕組みを発見

更新日:2015年6月5日

細胞から分泌される小胞(しょうほう)「エクソソーム」の、
がん細胞への取込み効率が増強される仕組みを発見
―細胞間コミュニケーションを利用した、がんへの薬物送達技術の応用に期待―

公立大学法人大阪府立大学(理事長:辻󠄀洋)の中瀬生彦 テニュア・トラック講師、慶應義塾大学の吉田徹彦 訪問教授、ベイリー小林菜穂子 訪問講師、武庫川女子大学の中瀬朋夏 准教授による研究チームは、細胞間情報伝達に関わる細胞分泌小胞(しょうほう)「エクソソーム」の、がん細胞への取り込み効率が増強される仕組みを発見しました。がん細胞が細胞外から栄養源を取り込む「マクロピノサイトーシス」経路を介することで、エクソソーム取り込み効率が増強されることを確認しました。

また、がんの悪性化に関わる「Rasタンパク質変異体発現細胞」におけるエクソソーム取り込み増強を初めて明らかにしました。

本研究成果は、オープンアクセス電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載(2015年6月3日)されました。

関連情報

研究成果のポイント

  • 生体内で細胞間情報伝達に重要な細胞分泌小胞(しょうほう)「エクソソーム」について、がん細胞における「マクロピノサイトーシス」経路を介することで、エクソソームの取り込み効率が増強される仕組みを発見しました
  • エクソソームに抗がん性タンパク質を内包させることで、がん細胞の死滅を促進しました
  • エクソソームの移行機構の理解や制御に役立ち、また積極的に細胞が取込める経路を利用したがんへの薬物送達技術への応用が期待され、疾患診断や治療技術開発への貢献が期待できます

研究成果の概要図

今回、生体内で細胞間の情報伝達に関わることが知られている細胞分泌小胞「エクソソーム」(解説1)において、がん細胞が細胞外から栄養源を取り込む経路である「マクロピノサイトーシス」(解説2)を介した、がん細胞内への取込みを増強するエクソソーム移行の仕組みを新たに発見しました。また、「がんの悪性化」に関わるRasタンパク質変異体が発現するがん細胞においても、本取込み経路によるエクソソームの取込み増強移行も確認できました。さらに、人工的に抗がん性タンパク質をエクソソームに内包させることで、がん細胞の死滅を促進させることも成功しました。

本研究結果は、これまで明らかにされていなかった、がん細胞におけるエクソソーム取込み増強や細胞間情報伝達の仕組みの理解に大きく役立ち、またエクソソームの積極的ながん取込み経路を利用した薬物送達応用など、疾患診断や治療技術開発への貢献が期待されます。

用語解説

解説1 細胞分泌小胞「エクソソーム」

生体を構成するほとんど全ての細胞から分泌する100ナノメートル程度の大きさをもつ小胞(しょうほう)。血液や尿、唾液等の体液に大量に含まれており、細胞間を行き来することで情報伝達を行っていることが知られています。また、患者から採取したエクソソームの内包物(マイクロRNA等)を調べることで、疾患診断に繋げる研究も進められており、現在大きく注目されています。

解説2 「マクロピノサイトーシス」

細胞が細胞外の栄養を取り込む時に、約1マイクロメートルもの大きさで細胞外物質を取り込む経路です。細胞がアクチン骨格を利用して、細胞膜があたかも大きな波を打つような形状[ラメリポディア(葉状仮足)構造]をつくり、細胞外物質を細胞内に取り込みます。がん細胞において、がんの悪性化に関わるRas変異体が発現することで、マクロピノサイトーシスを効果的に誘導し、細胞外の栄養を効果的に取込むことで、がん細胞の増殖が促進することも最近発見されています。

お問い合わせ

大阪府立大学 21世紀科学研究機構  ナノ科学・材料研究センター

担当 中瀬 生彦 テニュア・トラック講師

Tel 072-254-9895 Fax 072-254-9895 Eメール i-nakase[at]21c.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。