公立大学法人大阪府立大学

細胞から分泌される小胞(しょうほう)「エクソソーム」を利用した、新たな薬物送達技術を開発

更新日:2015年6月5日

細胞から分泌される小胞(しょうほう)「エクソソーム」を利用した、新たな薬物送達技術を開発
―効率的にがん細胞を死滅させることに成功―

公立大学法人大阪府立大学(理事長:辻󠄀洋)の中瀬生彦 テニュア・トラック講師と国立大学法人京都大学化学研究所 二木史朗 教授の研究チームは、生体内で細胞間コミュニケーションに重要な働きをしている「エクソソーム」と呼ばれる小胞(しょうほう)を利用して、細胞内へ薬物を送達する技術の開発に成功しました。脂質とペプチドを用いた極めてシンプルな手法で、エクソソームに内包した薬物を高い効率で細胞内へ導入させ、細胞内全体に薬物を届けることができる画期的な技術です。また本技術では、抗がん性タンパク質を内包したエクソソームを利用して、効率的にがん細胞を死滅させることにも成功しました。

本研究成果は、オープンアクセス電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載(2015年5月26日)されました。

関連情報

細胞から分泌される小胞「エクソソーム」を利用した、新たな薬物送達技術を開発(別紙資料)(525KB)

研究成果のポイント

  • 生体由来成分として注目されている細胞分泌小胞「エクソソーム」に人工脂質と機能性ペプチドを混ぜるという極めてシンプルな手法で、効率的な細胞内導入(送達)技術を開発しました
  • エクソソームに内包した薬物を細胞内で積極的に放出させ、高い効率で細胞内全体に届けることに成功しました
  • 生体材料を利用した次世代の薬物送達技術として、基礎生物研究から診断・治療といった医学・薬学応用に大きく貢献できることが期待されます

研究成果の概要

研究成果の概要図

細胞分泌小胞「エクソソーム」(解説1)は我々の体内に大量に存在し、がんを含む細胞間の情報伝達に関わることが知られています。このエクソソームの内部に遺伝子や薬物を入れて病気の元となる細胞内に送り込み、治療に役立てようという新しい取り組みが、世界でも活発に行われています。

しかしこれまでは、エクソソームを細胞内に送り込む際に、細胞内に取込まれる効率が非常に低いことが、大きな問題となっていました。

そこで本研究は、人工脂質とpH感受性膜融合ペプチドをエクソソームに添加する手法で、細胞内に取り込まれる効率を格段に上昇させることに成功しました。

さらに本手法においては、エクソソームに内包させた薬物を細胞内導入後に積極的に放出させ、高い効率で細胞内全体に薬物を届けられることを確認しました。本技術は、疾患診断や治療に役立つ薬物をエクソソームに内包させることで、細胞内可視化や細胞機能制御などの基礎細胞生物学研究から、医学や薬学への応用など、幅広い領域での今後の大きな貢献が期待されます。

用語解説

細胞分泌小胞「エクソソーム」

生体を構成するほとんど全ての細胞から分泌する小胞。100ナノメートル程度の大きさをもつ。血液や尿、唾液等の体液に大量に含まれており、細胞間を行き来することで情報伝達を行っていることが知られています。また、患者から採取したエクソソームの内包物(マイクロRNA等)を調べることで、疾患診断に繋げる研究も進められており、現在大きく注目されています。

お問い合わせ

大阪府立大学 21世紀科学研究機構 ナノ科学・材料研究センター

担当 中瀬 生彦 テニュア・トラック講師

Tel 072-254-9895 Fax 072-254-989 Eメール Eメール i-nakase[at]21c.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。