公立大学法人大阪府立大学

極低温4ケルビンで動作する小型高性能な超伝導中性子検出器の開発に成功

更新日:2014年3月25日

ニオブ(Nb)超伝導細線とボロン10(10B)膜を使った画期的な固体超伝導検出器チップ
再開したJ-PARCで、新原理による超伝導中性子検出器の動作を実証

大阪府立大学、名古屋大学、産業技術総合研究所の研究チームは、日本原子力研究開発機構J-PARCセンターのパルス中性子源を用いた実証実験を行い、新しい原理に基づく電流バイアス型運動インダクタンス方式を採用した超伝導中性子検出器の開発に成功しました。

従来の中性子検出器(解説1)は大型で高電圧電源を必要としていましたが、今回実証に成功した新型中性子検出器は、小型軽量で、わずか数ボルトの電圧で動作します。また、Nb(ニオブ)の超伝導集積回路技術を用いて、22mm角のシリコン基板に超伝導検出器を全固体でワンチップ化し、Nb細線の線幅も0.6マイクロメーターとサブミクロンの空間分解能(解説2)に道を拓き、百万画素のイメージングが近い将来実現することにつながる画期的な技術です。しかも、従来のものに較べて3桁も超高速で作動するなどの特徴もあります。

今後は、我が国の大強度陽子加速器施設J-PARCにおいて、パルス中性子イメージング装置として実用化される可能性があります。また、原子炉などの中性子強度測定、非破壊検査、新材料の開発、スピントロニクスなどの分野において、世界の最先端研究施設で超高速・高感度・超高空間分解能の中性子検出器として利用され、物質科学・バイオ科学・磁気科学の進展に寄与すると期待されます。

研究グループ(石田武和教授ら)は、東海大学で開催の「日本物理学会第69回年次大会」(3月27日~30日)の4日目に今回の画期的超伝導中性子検出器の最新の成果を発表します。

J-PARC 物質・生命科学ディビジョン長 新井正敏氏のコメント

大阪府大の研究グループはMgB2を使った超伝導中性子検出器では実績があり、このほど、汎用的に使われているニオブ(Nb)細線を使って、4Kでも動作する検出器の開発を行い、J-PARCのパルス中性子強度の時間分布を測定で再現するなど間違いなく中性子が検出できていることを実証した。高空間分解能の超伝導中性子イメージング素子がワンチップ化され、近い将来実現することが大いに期待できる。この成果は、中性子を利用する科学や産業応用にとって、大きなブレークスルーであり、このイノベーションが我が国発のオリジナル技術であることを喜びたい。

関連情報

「極低温4ケルビンで動作する小型高性能な超伝導中性子検出器の開発に成功」に関する発表資料全文(2MB)

用語解説

解説1:従来の中性子検出器

広く利用されている中性子検出器の一つにBF3計数管があります。この検出器は同位体を濃縮したBF3ガス(99% Boron 10)からなり、10B + n → 7Li + α 線 の核反応(2.3MeV)を使用します。(7Li / 4He)イオンによる電離を大きな電圧をかけて集めます。すると、1-3mV の信号が発生し、それを増幅して信号を検出します。例えば、15ms(ミリ秒)の動作時間で検出器自体は相当大きなものになります。

IEC Fusion Reactor Mark 3 Neutron Detector(RTF TechnologiesのWEBページ)

中性子散乱実験や原子力発電所などで広く利用されている中性子検出器の一つに3He比例計数管があります。この検出器は同位体である³Heガスを金属管に封入したもので、3He + n →3H + p の核反応(0.75MeV)を使用します。(3H / p)イオンによる電離を大きな電圧をかけて芯線に電荷を集めます。また同様に6Li や10Bを使ったシンチレータ検出器があります。この検出器は、同位体である6Liや10Bをシンチレータ内に混ぜ込んだもので、6Li + n → 3H + α線(4.78MeV)、10B + n → 7Li + α線(2.3MeV)の核反応を使用します。α線などがシンチレータを励起・発光させ、その微弱な光を光電子増倍管で電気信号に増幅します。

He3中性子検出器は高感度であり、広く使われて来ました。国際的には、中性子散乱施設長の会合がありHe3不足問題が議論され、小面積のHe3検出器や既存のHe3検出器の保守には供給可能とされていますが、大面積の3He検出器の代替検出器の開発は不可欠となっています。シンチレータ方式の中性子検出器は、6Li-ZnS、B2O3-ZnSシンチレータ検出器がJ-PARCとSNSの波長変換ファイバ読み出し型検出器が代替候補とされていますが、更なる高性能シンチレータの開発が重要とされています。

解説2:中性子検出器の空間分解能

従来の中性子検出器の空間分解能については、3Heガス中性子検出器で、数cm~1mm程度、B2O3シンチレータ中性子検出器で数cm~1mm程度です。イメージング用中性子検出器では、例えば、CCDカメラ+シンチレータ等の組み合わせで数十μm程度、3Heガス検出器(マイクロストリップパターン型)200μm程度であることが知られています。
本研究で開発した超伝導中性子検出器は1μm以下の空間分解能も実現可能であり、従来技術を革新する性能と言えます。

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