公立大学法人大阪府立大学

大阪府立大学 韓国天文宇宙科学研究院に研究協力

更新日:2013年4月18日

概要

 大阪府立大学理学系研究科宇宙物理学研究室は、韓国天文宇宙科学研究院の電波望遠鏡(KVN(解説1):写真2)の新しい観測計画に積極的に参加しています。
KVN(Korean VLBI Network)とは韓国のソウル、ウルサン、チェジュ島の3ヶ所に設置された口径21mの電波望遠鏡から構成されており、3台の望遠鏡を1つの巨大な望遠鏡としてVLBI観測(解説2)を行っています。我々の研究室は韓国天文宇宙科学研究院からの依頼を受け、昨年から、ウルサンの21m電波望遠鏡のVLBI観測に使用する6.7GHz(解説3)フィードホーン等の設計製作を行ってきました。このたび完成し、5月に同天文台に移設を行います。
今回搭載を予定しているウルサン21m電波望遠鏡は日本のVLBIであるVERA(解説4)の4つの電波望遠鏡、それに茨城大学、山口大学それぞれの32m電波望遠鏡とVLBI観測を行うことが予定されています。これによって6.7GHzのメタノールの観測という分野において、東アジア(日中韓)の新しいネットワークをつくることになります。この東アジアVLBIはメタノール分野で先進的なVLBI網であるEVN(欧州VLBI)に匹敵するものであり、今後の活躍が期待されます。

研究協力内容

 「口径21mのウルサン電波望遠鏡に搭載されるフィードホーン等の設計、製作」
設計:理学系研究科宇宙物理学研究室
製作:「村上精機株式会社」(堺市堺区山本町)等
形状:直径340mm×長さ470mmの円筒状(写真1)。
今回の協力依頼は、同研究室が、VERAやALMA(解説5)等の電波天文学機器開発の経験と高い実績を有していることが評価されたものです。

フィードホーンの役割

 電波望遠鏡で集光された宇宙からの電波を、受信機に受け渡しを行う重要なパーツであります。自由な空間を伝搬する電波の受信機回路の導入には効率のよい変換が必要です。このため細かな設計、さらに精度の高い製作技術が非常に重要となります。
既に大阪府立大学ではVERAの4つの20m電波望遠鏡および中国の上海天文台25m電波望遠鏡の6.7GHz帯フィードホーンを製作しており、今回の韓国を含めて日中韓のネットワーク作りに対する大きな貢献となりました。

メタノールの電波観測

 電波望遠鏡等で観測されている宇宙空間に存在する星間分子は水、一酸化炭素、エタノール等100種以上が現在発見されています。メタノール分子もそのうちの1つで今回の観測ターゲットのメタノールが出す特徴的な周波数6.7GHz(波長4.5cm)の電波です。
メタノールは太陽の10倍程度の大きな質量の星が誕生する領域で多く見つかっており、その物理状態を詳細に観測することにより、まだ謎が多い大質量星についての生成機構が明らかにされると期待されています。

堺の精密加工技術のさらなる進化

 こうした堺市の村上精機株式会社を中心とした企業の精密加工技術を活かしたフィードホーン等の製作は東アジアの電波望遠鏡のVLBI観測を支えるものとなっております。さらに上記の堺の企業は茨城大学、山口大学の電波望遠鏡に搭載する超高感度受信機用冷却装置の開発、製作も担当しております。私たちはこのような学問の基礎を支える技術がここ堺で成長し、発展できるよう努力したいと思っております。

写真1:完成したフィードホーン(大阪府大にて)

写真1:完成したフィードホーン(大阪府大にて)

写真2:日中韓のVLBIネットワーク

写真2:日中韓のVLBIネットワーク
今回のウルサンの参加で山口、入来等を結ぶ近距離の基線が増え、より精密な観測が可能となる。
(上記8望遠鏡参加の場合28基線のネットワークとなる。)

用語解説

解説1:KVN

Korean VLBI Networkの略で韓国のソウル、ウルサン、チェジュ島の3ヶ所に21m電波望遠鏡(写真2)を設置し、VLBI(解説2)観測を行うことを目的とした電波干渉計です。既に日本の国立天文台のVLBIであるVERA(解説4)と結んで周波数22GHz(解説3)等で既にVLBI観測が始められています。VLBIの特徴である細かい構造を観測することにより星や銀河の形成などを研究しようとするものです。

解説2:VLBI観測

Very Long Baseline Interferometryの略です。これは複数のアンテナで同一天体を同時に観測し、それらのデータを相関処置することで、非常に細かい構造まで観測することが可能です。その分解能は一番はなれた望遠鏡間隔と同じ大きさの巨大な望遠鏡と同じです。今回のKVN、VERAは代表的なVLBIです。大事なことは精度よく観測するためには大小いろいろな間隔をもつ2次元的な望遠鏡群が必須です。今回のウルサン望遠鏡は相対的により小さな間隔を埋めるものとなり、より精密な観測ができると期待されています。

解説3:GHz(ギガヘルツ)

電波は波です。1秒間に1回振動する電波を周波数1ヘルツ(Hz)の電波といいます。 そして1秒間に10億回振動する電波が1ギガヘルツ(GHz)です。ちなみにBS放送は周波数12GHz帯の電波を使用しています。

解説4:VERA

VLBI Exploration of Radio Astrometryの略です。VERAでは日本の国立天文台が岩手水沢、東京小笠原、鹿児島入来、沖縄石垣に口径20mの電波望遠鏡を配置して、VLBI観測を行っています。このVERAにも大阪府立大学宇宙物理学研究室が6.7GHz帯受信機の開発を行いました。現在、観測に用いられています。

解説5:ALMA

Atacama Large Millimeter/submillimeter Arrayの略で日米欧が中心となって、南米チリのアンデス高地に建設している巨大なミリ波サブミリ波干渉計です。ALMAの空間分解能はすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の約10倍に達し、現存する干渉計の中では群を抜いています。日本はALMAに対して16台の望遠鏡本体とさらに150GHz帯、500GHz帯、900GHz帯受信機などの開発などを行っております。大阪府立大学宇宙物理学研究室は150GHz帯、900GHz帯受信機の開発で協力してきました。

<参考>

お問い合わせ

公立大学法人 大阪府立大学 理学系研究科 宇宙物理学研究室

担当 小川 英夫

Tel 072-254-9726(直通)

担当 大西 利和

Tel 072-254-9727(直通)