大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
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「研究」と「共育」を中心として、社会に貢献できる「技術開発」と「人材育成」に取り組んでいます。テニュアトラック制では恵まれた環境の中、一定の緊張感をもって研究・教育を推進できるため、採択された研究者には飛躍的な成長が期待されています。末吉助教には得意の電気泳動を活かした次世代の高性能分析方法・デバイス開発に向けて邁進してほしいと思っています。末吉 健志専門分野:分析化学(電気泳動分析、バイオアッセイ、ミクロスケール分析)工学研究科 ミクロスケール電気泳動(キャピラリー電気泳動、CE; マイクロチップ電気泳動、MCE)は、内径50~100 μm 程度の毛細管やマイクロ流路内で電気泳動に基づく分離分析を行う手法である。ごく微量の試料溶液に対して迅速かつ高分離能な分離を達成できることから、近年、特に微量かつ希少な生体試料分析において重要な手法となっている。その一方で、CEおよびMCEの低い濃度感度については改善が望まれている。そこで、これまでに新規オンライン試料濃縮法や分離手法、および流路内表面修飾法を開発し、高感度化、迅速化、分離能向上を実現してきた。中でも、新規オンライン試料濃縮法であるトランジェント-トラッピング法は、高感度化と分離能向上を両立可能な手法として注目されている (Figure 1)。 酵素活性アッセイや免疫反応を利用したイムノアッセイなどのバイオアッセイは、現代の生命科学・薬学・医学分野において必要不可欠な分析手法であるが、煩雑かつ分析に長時間を要する点が問題視されてきた。近年ではそのミクロスケール化によって、ごく微量の生体試料に対して迅速なアッセイが可能となってきたものの、マイクロデバイス自体の作製手順の煩雑さや低い濃度感度についてはまだまだ改善の余地が残されている。そこで、ミクロスケール電気泳動におけるオンライン試料濃縮法を組み合わせることで、比較的簡素なデバイスで簡便・迅速かつ高感度なバイオアッセイを開発してきた。その一例として、酵素活性アッセイと試薬放出キャピラリー、界面活性剤放出ヒドロゲル、そしてオンライン試料濃縮を組み合わせた、高感度・簡便・迅速なミクロスケール酵素活性アッセイを開発した(Figure 2)。 近年、生体適合性や温度応答性、pH応答性などの様々な機能性を有する分子が開発されている。本研究では、新規機能性材料で調製したヒドロゲルを用いる新規電気泳動分析法の開発とそのミクロスケールバイオアッセイへの応用を進めている。その一例として、様々なpH緩衝能を有するヒドロゲルと密度の異なるヒドロゲルが二次元的に配置された二次元積層ヒドロゲルを調製し、これを用いた二次元デジタル電気泳動分析法によるタンパク質の多段階分離・濃縮を実現した(Figure 3)。今後、様々な機能性ヒドロゲルが積層されたデバイスを用いて電気泳動を行うことで、複数のバイオアッセイを1デバイスで行う多次元デジタル電気泳動分析の実現が期待される。Kenji SUEYOSHI【略  歴】 平成20年3月、博士(工学)取得(京都大学大学院工学研究科)。日本学術振興会 特別研究員、Stanford大学(CA. USA)客員研究員、京都大学大学院工学研究科材料化学専攻 助教を経て、平成25年1月、大阪府立大学大学院工学研究科テニュアトラック助教に着任。テニュアトラック教員としての抱負第1メンターよりテニュアトラック教員紹介久本 秀明 工学研究科 教授ミクロスケール電気泳動分析の高性能化・高感度化ミクロスケールバイオアッセイの迅速化・簡略化・高感度化新規ミクロスケール電気泳動バイオアッセイの創成Figure 1. トランジェント-トラッピング法による高感度化従来法トランジェント-トラッピング法Figure 2. ミクロスケール酵素活性アッセイ の高感度化200 倍に濃縮Figure 3. 二次元デジタル電気泳動による分離・濃縮試料導入デジタル等電点分離デジタルサイズ分離研究内容H24年度採用電気泳動を基盤技術とした新規分析法の開発7

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