大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
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テニュアトラック教員へのエール辰巳砂 昌弘工学研究科長川口 剛司生命環境科学研究科長溝口 幸司理学系研究科長 私も助手に採用された当時は、期待を膨らませ、非常に喜んでいたことを思い出します。現職に至るまで、私自身大学を3回移っており、大学を移る度に期待を膨らませていました。しかし大学毎(または研究室毎)に、研究・教育のスタイルや方針が違っており、その度に戸惑うこともありました。特に、その当時は講座制を取っていたため、教授の指示する研究の方向性や研究内容に従うことが常であり、研究室間の交流もほとんどなかったことを覚えています。現在、本学が進めているテニュアトラック制では、各テニュアトラック教員に、スタートアップ費用を含む研究費用が用意され、各教員の意向が、研究の方向性や研究内容に反映されていることと思います。期限付きでテニュア資格の審査があるものの、自由な発牧岡 省吾人間社会システム科学研究科長想の下、研究を進めることができることは、講座制と比べ、非常に良い研究環境になっていると思います。 このような環境下で、研究・教育を行いつつ、研究成果を挙げていくことが、テニュアトラック教員の第1の使命ですが、私としては、テニュアトラック教員としての在職中に、ライフワークとなる世界に貢献する研究目的を見出していただきたいと希望しております。世界に貢献するための研究を継続的に進めることによって、その研究分野での第1人者、または世界的著名な研究者になることでしょう。最後に、中学や高校、または大学の教科書に掲載されるような、世界に貢献する研究成果を挙げられることを、期待しております。 テニュアトラック教員は、採用時の競争はもちろんですが、採用後も課せられた審査基準をクリアするための厳しい状況の下に置かれていることでしょう。その基準とは、論文数や外部資金獲得額といった研究に関わるものが主ですが、大学の最も重要なミッションは教育にあることは言うまでもありません。学生をそれまでとは全く異なる競争社会で生き抜くことのできる人間に大学での4年間で育て上げなくてはなりません。テニュアトラックの期間をうまく活用し、自身の研究の土台をしっかりと築きあげてください。そして学生をリードする教員になってください。 私が本学工学部の助手として就職が決まった当時、研究を直接指導頂いた当時助手の先生の言葉を今でも覚えています。「大学の研究室での教員生活は“ぬるま湯”やから気いつけなあかんよ。」最低限のことをしていればクビにはならないが、サボっても誰も叱咤してくれないので、気づいたら挽回できないぐらい取り残されることもある、という助言でした。 本学のテニュアトラック制は、皆さんがこの“ぬるま湯”で苦しまないための良い制度です。複数のメンターによって、論文数や獲得外部資金など過保護なぐらい管理されます。 「終身雇用になれる」のと「任期が切れる」のとではコンセプトとしては真逆です。ここが以前の任期付き助教制度と大きく違う点です。皆さんには、この制度を前向きにうまく活用して研究業績を上げて頂ければと思います。 そして研究業績を上げる上で重要なのは「学生」です。大学は また、大学における教員の他のミッションに大学運営と社会貢献があります。将来、テニュアの資格を得た後には、新たな職務が課せられることになることに今から準備しておくことは重要かもしれません。研究に加え優れた人材を世に送り出すのが大きな使命です。学生の研究に対するモチベーションは、皆さんが本物の研究の一端を上手く見せることで高めることができ、将来の優れた人材となる原動力となります。一方で、学生は力強い研究協力者でもあり、与えられる研究テーマによってモチベーションが大きく左右するため非常に重要です。研究が進展し、皆さんが予想もしない結果をたたき出してきたときは要注意です。「変なデータ」が単なる測定ミスか、大発見の兆しかの見極めは必ずしも容易ではありませんが、その時こそが皆さんの腕の見せ所です。学生のモチベーションをさらに高める好機であると同時に、皆さんの研究を大きく飛躍させるチャンスでもあります。知性、感性、体力の充実した若い皆さんが、学生との共同作業で、ノーベル賞クラスの大きな研究成果を上げられることを心より期待しています。若い教員の皆さんへの手紙 現代システム科学域が平成24年4月に発足し、その第一期生の卒業に合わせて進学先大学院を整備する計画であったことから、学士課程である現代システム科学域においてテニュアトラック教員の採用を進めてきました。平成28年4月に、進学先である人間社会システム科学研究科の準備が整い、テニュアトラック審査部局が研究科に移行しました。 本研究科は持続可能社会の実現に貢献する人材育成を目的として文理融合型の教育を進めており、先生方のご専門はそれぞれ、情報学、環境学、研究倫理と、本学域の中核を担う分野です。 皆さんには、テニュアトラック期間中に、是非それぞれのご研究の柱となる業績をつくってほしいと思います。テニュア資格を得た後、教育の負担はかなり増えます。学際的な教育研究を進める人間社会システム科学研究科である学際領域におけるテニュアトラック制からこそ、専門家としての研究の軸となるような業績を固めておくことが必要です。良く言われるように、学際研究を進めるためには、各研究者がそれぞれの専門的知見を十全に把握していなければなりません。その上で、他分野の研究者とコミュニケートし、協働する能力が必要となってきます。まずはテニュアトラック期間に、他分野の研究者から信頼されるだけの、各自のご専門での業績を積み上げてもらえたらと思います。 人間社会システム科学研究科では、本学で初めての文系分野のテニュアトラック教員が採用されています。全国的にも文系ではテニュアトラック制度の導入が遅れていますが、採用枠が縮小されつつある文系でのニーズは高まってきています。この試みが本学の中で、そして全国に広がっていくことを望みます。世界に貢献する研究成果をテニュア資格取得に向けて5

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